20世紀の初頭、アフリカ、アジアに約50万頭生息していたと推測されるサイは、1970年頃には7万頭、現在では2万9千頭にまで激減している。うち一番数が多いのは南部シロサイの約2万頭。その9割が南アフリカに生息する。
サイの生息分布状況(Save the Rhino) |
南アフリカにおけるサイの密猟数は、2000年(7頭)から2007年(13頭)の間、年6頭から25頭の間を上下していた。それが2008年、83頭に急増し、その後も毎年、飛躍的に増加。2014年には、なんと1215頭ものサイがツノ目当てに殺されてしまった。2015年は1175頭と前年より多少減少したが、それでも油断できるレベルではない。(今年は5月8日現在で363頭。)
南アにおけるサイの密猟数 2007年-2015年(Save the Rhino) |
被害が断然多いのが、クルーガー国立公園。南アフリカに数ある野生動物保護地域の中でも世界で一番有名であり、南アのサイの半数以上がここを住処とする。
当然のことながら、環境省や国立公園管理局(SANParks)はサイの保護を重要項目とし、密猟撲滅を目指して、予算をつけ、人をつけ、日夜努力していることになっている。それなのに、これほど成果が出ないのは、レンジャーなど公園職員がグルになっているせいとしか考えられない。
密猟数(緑)と逮捕された密猟者数(オレンジ)(WESSA) |
今回、逮捕されたばかりのふたりのレンジャーは、サイのツノ4本を持っていたところを捕まった。今月の初めには、別の職員ふたり(レンジャーとテクニカルサービススーパーバイザー)が逮捕され、更に特別班のふたりが停職処分になっている。この「特別班」はサイ密猟対策を目的に設立されたもの。そのメンバーが密猟に加担していたのだ。
国立公園管理局のスポークスマン、レイ・タクリ(Rey Thakhuli)曰く、「この国の野生動物や遺産を守るために雇われた人々が資源破壊の中心にいるとは落ち込んでしまう」。今後も内部調査を継続するという。
「これは負けることができない戦いだ」と語るのは、国立公園管理局のCEO、フンディシレ・ムケテニ(Fundisile Mketeni)。
しかし、密猟に関わる職員を一掃しても、解決策にはならない。新しく雇った職員が密猟を行ったり、外部の密猟者と通じる可能性がある。また、実行犯のほとんどは外部からの密猟者だ。サイのツノが金の塊にしか見えない実行犯に、野生動物保護を説いても馬の耳に念仏。逮捕されても、刑務所に入れられても、大金につられて密猟に手を染めようという志願者は後を絶たないだろう。
一方、中国人やベトナム人が裕福になり、購買力が高まるに伴い、媚薬として、二日酔い薬として、はたまたガンの特効薬として、サイのツノの需要は高まるばかり。
究極的な解決は、中国やベトナムの消費者教育に期待するしかない。サイのツノの成分は、爪や髪の毛と同じケラチン。何の薬用効果もないのだから。そして、爪や髪の毛と同様、切っても生えてくるのだから。殺す必要は全くないのである。
むごたらしく殺されたサイたち。体を動けなくして、生きたまま根元から、顔ごとツノを切られることもしばしば。(Stop Rhino Poaching) |
(参考資料:2016年6月21日付「The Times」など)
【関連HP】
Save the Rhino
WESSA (the Wildlife and Environment Society of South Africa)
Stop Rhino Poaching
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