貧しい家庭の子供にも良い教育を受けさせたい。当然の願いだろう。
公立学校で、貧しい家庭の子供の授業料を減額または無料にする。民主国家の国民で、異議を唱える者はまずいないだろう。いてもごく少数ではないか。
そういえば、小学校の頃、母子家庭で生活保護を受けていた級友は少なめの月謝を払っていた記憶がある。
南アフリカでは家庭ごとではなく、学校ごとに「貧しさ」を測定している。5段階に分け、「貧しい学校」(父兄の収入が少ないということだろうか?)ほど、政府の援助を沢山受けることになっているのだ。一番「貧しい学校」では、父兄が払う授業料ゼロ。そして、全ての子供に教育の機会を与えるため、無料学校の数を増やしているという。
ところが、無料学校に十分な資金援助が与えられていないようなのだ。チョークなど必要最小限のものも買えないため、無料学校の多くは学校として機能していないという。
そう言明しているのは、アンジー・モチェハ(Angie Motshekga)。基礎教育相その人である。
機能しないのは困るので、授業料を請求する無料学校が出て来た。これは違法である。ところが、父兄に寄付を求めるのは違法ではない。そこで政府は、父兄が学校に寄付するのを奨励し、そのためのガイドラインを設けようと考えている。
モチェハ教育相は議会の記者会見で、父兄が出来る限りの援助を学校に与えることの重要さを強調した。「(学校に)貢献するよう父兄を奨励しなければ、地域社会が無力化する」とまで言い切る。
「子供に携帯電話を買い与えることが出来る父兄が、学校に貢献するのを拒否している」「2リットルのコカコーラは買えるのに、学校に20ランド(200円)すら寄付しない」と不満を隠さない。
「学校が寄付を求めるのは、授業料を課しているわけではない。」「お金が払えないからといって、子供を学校から追い出すことはできない。しかし、父兄に貢献を奨励するのは賢明だと思う。」
父兄が貧しくて授業料が払えないから、その学校を授業料ゼロに指定しているはずなのに、「寄付は授業料ではない」という論理で父兄に金銭の提供を求めるのは本末転倒ではないか。無料学校には、政府が十分な援助を与えるべきだろう。
また、「同じ地域に住む人々は同じ経済環境に属する」という仮定が、そもそも間違っているのではないか。授業料を減額または免除するかどうかは、「学校」ごとではなく、「家庭」ごとに決める方が妥当ではないか。そうすれば、「子供に携帯電話を買い与えることが出来る父兄」に対する不満も出てこないだろう。
因みに、無料学校というのは一体どのくらいあるのだろう。
基礎教育相によると、今年の年度始め現在、南アフリカの公立初等学校、中等学校のなんと「69%以上」が無料学校! その多くが資金不足でロクに機能してないとは空恐ろしい。
今年度の南アフリカ政府の予算は1兆600億ランド。うち、教育予算は2325億ランドで、国家予算の約22%。国家予算に占める割合が他の何よりも大きい。一体、このお金、どこに消えているのだろう・・・?
(参考資料:2013年9月19日付「Business Day」など)
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