タレンテ・ビイェラ(Thalente Biyela)君の人生はその逆。どん底から始まった。
お母さんが亡くなって、誰も面倒を見てくれる人がいなくなったから、路上生活を始めたという。一緒に住んでいた義理のお父さんは麻薬の売人。家では暴力を振るった。
初めて家出をしたのは9歳。11歳から完全なホームレスになった。住んだのは、ダーバンの海水浴場にあるスケートボード場の近く。そのうちスケートボードをする人たちと仲良くなり、スケートボードを開始。スケートボード仲間が衣類や食料をくれた。勿論、学校には行かない。どこで麻薬を買うお金を得たのか、ヘロイン中毒だった。
2年前、17歳の時、元プロサーファーのタミーリー=スミス(Tammy-Lee Smith)が自分の家に引き取ってくれた。タレンテ君のチャーミングさとカリスマ性に惹かれたという。読み書きが出来ないタレンテ君のために、家庭教師まで雇ってくれた。
スミスさんの好意にタレンテ君は応えた。きっぱりと麻薬を止め、決意が固いことを示すために、毎週、麻薬検査を受けた。
最後に学校に行ったのは8歳の時。17歳なのに時計すら読めないタレンテ君にとって、読み書きを学ぶのはとても難しかった。だが、頑張って勉強したことが人生を変えたという。
「取り残された感がなくなった。自分は馬鹿だと思う気持ちがなくなった。読み書きが楽しくなった。」
スミスさんも、喜びを隠しきれない。「素晴らしい人間に成長してくれた。いろんなことに自信を持つようになったのを見るのは嬉しい。」
ロサンゼルス在住の南ア人フィルムメーカー、ナタリー・ジョーンズ(Natalie Johns)さんが友人のスミスさんを訪れたのは、2012年12月のこと。スケートボードをするタレンテ君をビデオで撮影したら、インターネットで大評判になった。
これはジョーンズさんがタレンテ君に出会うより前の2012年1月16日に、ユーチューブにアップされた映像。
2013年1月、タレンテ君はアメリカのスポーツビザを手に、ロサンゼルスへ。ジョーンズさんが引き取ってくれることになったのだ。そして、スケートボードチャンピオンのケニー・アンダーソン(Kenny Anderson)に弟子入り。タレンテ君は「スケートボードをするために生まれてきた」と、アンダーソンさんは目を細める。
ロサンゼルスのタレンテ君(「サンデータイムズ」紙より) |
現在、ジョーンズさんはタレンテ君のドキュメンタリーを制作中。(ドキュメンタリーの中では、「タレント」と呼ばれている。)
まだ19歳のタレンテ君。新天地アメリカでトレーニングを積み、競技会に挑戦するという。
人生、本当になにが起こるかわからない。
(参考資料:2014年1月5日「Sunday Times」など)
【関連HP】
I Am Thalente Speed&Spark
【関連記事】
ハリウッド映画のボディダブルは、乳ガンのサバイバー (2012年9月9日)
逆境に負けない! 14歳で大学入学 ジンバブエ (2012年6月8日)
ケープタウンのお婆ちゃん 空手8段に (2012年1月29日)
麻薬中毒者が一念発起、テコンドー世界チャンピオンに (2011年8月21日)
ジョディ・ビーバー 「タイム」誌の表紙を撮った南ア人写真家 (2010年9月19日)
南アでロマンス小説 著者は19歳の黒人青年 (2010年8月23日)
0 件のコメント:
コメントを投稿