2012/01/16

アフリカ民族会議(ANC) 100歳に 12人の指導者像

南アフリカの元解放運動組織で現与党「アフリカ民族会議」(ANC:African National Congress)が創立百周年を迎えた。

1月8日、フリーステート州マンガウンで大々的な記念式典を開催。支持者10万以上、VIPゲスト6000人が一堂に会した。国家元首が46人も参加したというから、一政党のイベントにしては大したもの。(自民党や民主党が百年続いたとして、百周年記念式典に外国の国家元首が来るだろうか。)

かかった費用、推定100万ランド(約1千万円)。今年一年、全国各地で記念行事を繰り広げるというが、誰が請求書を支払うことやら。見返りを期待して、資金を提供するビジネスマンが後を絶たたないかもしれない。

ANCの前身、SANNC(South African Native National Congress)は1912年1月8日、ブラームフォンテインの教会で結成された。1923年、ANCに改名。1994年から南アフリカの与党。2009年の総選挙でも、投票率65.9%と圧倒的な強さを誇った。

しかし、ネルソン・マンデラは別格として、それ以外の指導者についてはあまり知られていない。百周年を機会に、結成以来12人を数える指導者(党首)を振り返ってみる。

ジョン・ドゥベ
ジョン・ランガリバレレ・ドゥベ(John Langalibalele Dube)1912-1917

エッセイスト、哲学者、教育者、政治家、出版者、編集者、小説家、詩人。ナタールで首長の家系に生まれ、アメリカで教育を受ける。黒人の権利拡大を目指し、黒人が団結する必要性を感じていた。政治的には慎重で保守的。本人不在の席でANC代表に選出され、1917年に組織から追い出された。

セファコ・マハト(Sefako Makgatho)1917-1924

イギリスで教育を受けた教師。マンデラの息子マハトは、セファコ・マハトに因んで名づけられた。ANCの色(黒、緑、金色)、スローガン「マイブイェ・イ・アフリカ」(Mayibuye iAfrica=Africa must come back)、組織の歌「ンコシ・シケレリ・アフリカ」(Nkoshi Sikelel'iAfrica)などを制定。

ザカリア・マハバネ(Zacharia Mahabane)1924-1927、1937-1940

「全国民が平等に一票を持つ選挙は受け入れられないと白人が感じるなら、人種別の選挙でも構わない」という考えを持ち、ANC存続の危機を招いた。しかし、何故か2度も党首を務めた。

ジョウサイア・グメデ(Josiah Gumede)1927-1930

ソビエト連邦を訪問して、「新しいエルサレムに行ってきた!」とすっかり共産主義に陶酔。ANCを社会主義政党に変革しようとしたが、当時のANCでは共産主義に懐疑的な首長や王が有力だったため、指導者の座を追われた。

ピックスレイ・カ・イサカ・セメ(Pixley Ka Isaka Seme)1930-1937

超保守的な伝統主義者。首長をはじめとする有力者の後押しでグメデの後釜に据えられたものの、政策失敗などにより一般会員の反感を買った。

アルフレッド・B・クマ(Alfred B Xuma)1940-1949

元教師。ヨーロッパで婦人科医になる。ANCを「教育のあるエリート集団」から「一般大衆のための組織」に変貌させようとした。クマの指導下でANC青年同盟が結成される。人種差別的な法律に反対する不服従運動を率いることを拒絶したことから、マンデラやオリヴァー・タンボなど青年同盟幹部が反旗を翻し、青年同盟によって指導者の座を追われた。

ジョイムズ・モロカ(James Moroka)1949-1952

クマ後、ANCを率いる適任者がおらず、青年同盟に担ぎ出された。共産主義弾圧法違反容疑で逮捕されると、長期服役の可能性に耐えきれず、人種差別に反対するのを止め、ANCから追放された。

アルバート・ルツリ
アルバート・ルツリ(Albert Luthuli)1952-1967

偉大な思想家、無私無欲の指導者の誉れが高い。ANCの現本部ビルは「ルツリ・ハウス」と呼ばれる。ノーベル平和賞受賞。非暴力主義を貫いたため、戦闘的なANCメンバーの反感を買い、ロバート・ソブクウェ(Robert Sobukwe)らが別組織「パンアフリカン会議」(PAC:Pan-African Congress)を結成した。

オリヴァー・タンボ(Oliver Tambo)1967-1990

南ア国内でANCが非合法化された後、国外にいながら、南ア内外の様々な障害を乗り越え、長年にわたってANCを統率した功績は大きい。

ネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)1990-1997

ウォルター・シスルなどとANC青年同盟を結成。リヴァニア裁判で有罪となり、27年間服役。1994年、南アフリカ初の民主選挙で大統領に選ばれる。ノーベル平和賞受賞。

ターボ・ムベキ(Thabo Mbeki)1997-2007

マンデラの盟友ゴヴァン・ムベキの息子。若い時から将来の指導者と嘱望され、英サセックス大学で経済学を学ぶ。1999-2008年、南ア大統領。保守的なマクロ経済政策と黒人優遇政策を追求。2期目の任期の終了を待たず、大統領を罷免された。

ジェイコブ・ズマ(Jacob Zuma)2007-

正規の教育を全く受けていない、初めてのANC党首。大統領就任前から、汚職やレイプ容疑で逮捕・起訴されるなど話題に事欠かない。指導力に欠け、「反ムベキ」の旗の元に団結した支持者がどんどん離れて行き、現在の党の混乱を招いた。

今年は党首選出の年。ズマが再選されるか、13人目が選ばれるか、興味深いところ。

(参考資料:2012年1月8日付「Sunday Times」など )

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