2011/04/28

大統領選の混乱で動物が餓死 コートジボワール

「朝日新聞」のHPでショッキングな写真が目に飛び込んだ。コートジボワール国立動物園のライオン「ララ」。(「内戦の犠牲 動物園SOS コートジボワール」)


昨年11月の大統領選後、バグボ大統領が敗北を認めなかったことから内戦が勃発。国立動物園があるアビジャンでは3月末から市街戦が続き、戦闘が終わった2週間後に職員が動物園に戻ると、ライオン、サル、ワニ、鳥など数10匹が餓死していたという。

2011/04/24

象の肉を囚人の食事に ジンバブエ

出来ることなら刑務所には入りたくない。特に南アフリカの刑務所には。(「飲酒運転で集団強姦!?! 過激な安全運転キャンペーン」参照)

尤も、囚人の人権コンサルタントである友人によると、アフリカの刑務所はどこもひどいらしい。政府やNGOに頼まれ、刑務所の実情調査などをするフリーランスの商売が繁盛するくらいだから、さもありなん。

ジンバブエの刑務所では、食事に何年も肉が出されていないという。メニューは2種類しかない。サザ(硬めにゆでたトウモロコシの粥。南アではパップと呼ばれる)とキャベツまたはサザと豆だ。食事内容は国際基準はもとより、ジンバブエの法律で定められた基準すら満たしていない。肉を買う予算がないというのが、刑務所管轄当局の言い分。

そこで法務省と刑務所管轄当局が目をつけたのが、象の肉。沢山いるからいいじゃないか、という論理。象がCITES(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora:絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)別名「ワシントン条約」の付属書I指定を受け、絶滅の恐れがあるため手厚く保護されていることなど眼中にない。

当然のことながら、環境団体は大反発。種の絶滅につながるだけでなく、ジンバブエにとって大きな観光資源である野生動物を殺すのは、「私たちが受け継いだ遺産を盗むこと」「未来の遺産を食いつぶすこと」に他ならない、とジンバブエ自然保護対策委員会(Zimbabwe Conservation Task Force)のジョニー・ロドリゲスス(Johnny Rodrigues)さんは嘆く。

一時は10万頭まで増えた象は、現在3万5千頭を切っている。政府は象を殺すのではなく「厳しい法律を制定して守るべき」とロドリゲスさん。

国立公園の管轄機関には、まだ法務省から打診がないらしい。単なる奇抜な思いつきとして、このままお流れになることを祈っている。

(参考資料:2011年4月20日付「Zimbabwe Independent」など)

2011/04/15

熱血教師、警官に集団暴行・射殺される ショッキングな映像が全国放送でお茶の間に

美しいセツォト市の農村部
平和的に行進する地域住民に警察が発砲。死傷者が出た。中でも国民にショックを与えたのは、6人の警官が非武装・無抵抗の男性1人に集団暴行を加え、射殺してしまった映像。国営放送の夜のニュースで、全国のお茶の間に流れた。

アパルトヘイト時代さながらの光景が繰り広げられたのは4月13日。アパルトヘイト時代と違うのは、住民に暴力を振るう警官たちが黒人ということだ。

セツォト(Setsoto)市は10年ほど前に新設された、フリーステート州東部に位置する小さな町。レソトとの国境に近い。サクランボ祭り(Cherry Festival)で有名なフィックスバーグ(Ficksburg)はその一部。人口12万6千人。

南アフリカの多くの町同様、民主的な黒人政府が誕生して17年経っても、基本的な社会サービスが提供されていないことに業を煮やした住民たちは、先日市長に嘆願書を提出。その回答を求めて、約4000人がセツォト市役所まで行進していた。

おとなしく歩いていた人々の列に、どこからか石が投げ込まれた。動揺する住民たちに向けて、警察は高圧放水砲を使用。混乱して右往左往する住民たち。

水を直撃した老人の前に、ひとりの若者が飛び出た。アンドリース・タタネ(Andries Tatane)さん。33歳の教師だ。

タタネさんの「罪」は、老人に水をかけないよう警察に頼んだこと。シャツを脱いで、「水をかけるのなら、老人ではなく、自分にかけてくれ」と懇願した。 あっという間に、6人の警官がタタネさんを取り囲み、棍棒を使って、殴る蹴るの暴行を加え始めた。そして、「撃て!」という声に続いて、銃声。

警官が囲いを解いた後には、タタネさんが血まみれで地面に横たわっていた。タタネさんは一旦立ち上がったものの、また崩れ去り、救急車が到着する前に亡くなった。

TVカメラがとらえた警察の暴行

警察はその後、混乱する群衆に向けても発砲した。

南アフリカの警察官は質が悪い。アパルトヘイト後の大問題のひとつ、犯罪が一向に減らないのは、警察官の数不足に加え、質の悪さが大きい。1990年代の半ば、警官数を拡大しようと、「高卒、運転免許証、逮捕歴なし」を条件に大募集した際、3つの条件を満たす応募者が殆どいなかったという笑うに笑えない話がある。

唯一有能だった特別捜査班「スコーピオンズ」は、政治家や政府高官などの汚職をビシビシ暴いたのが災いしたのか解体されてしまった。

前警察長官のジャッキー・セレビ(Jackie Selebi)は大物犯罪者が友達であることを隠そうともしなかったが、後ろ盾だったムベキ大統領の失脚に伴い逮捕され、汚職容疑で15年の実刑判決を受けた(「元警察長官 汚職容疑で有罪 15年の実刑判決」参照)。後任のベキ・ケレ(Bheki Cele)もズマ大統領という政治的コネで任命された。派手好きで、汚職疑惑が後を絶たず、しかも警察長官のしての指導力がなく、また、知能程度が疑われるような失言を繰り返している。

トップがそうだから、残りは推して知るべし。中には優秀な警察職員もいるだろうけれど、多勢に無勢、焼け石に水である。

倫理観が欠如し、気楽に賄賂を要求する。「報告するので名前と職名を教えろ」とこっちが開き直ると態度が変わるから、収賄が犯罪であることは知っている。

勿論、防犯・捜査能力は著しく劣っている。

警察による暴力もひどい。2007/2008年度、警察官の手にかかって死亡した人は792人にのぼる。2008/2009度には、なんと912人! 2009/2010年度は860人。このうち約3分の1が、拘留中に殺されている。(http://www.icd.gov.za/

今回犠牲になったタタネさんは教育熱心な教師で、南アフリカの明るい未来を信じていた。「いつか、真の、力強い指導者が南アフリカに現れる」と幼馴染のセイパティ・レブサ(Seipati Lebusa)さんに語っていたという。

駆けつけた親友モレフィ・ノニャネ(Molefi Nonyane)さんの腕の中で、タタネさんは息を引き取った。最後の言葉は、「これまで頑張って闘ってきたけど、もう疲れたよ。僕を助けてくれ。」

ノニャネさんの腕の中で息を引き取ったタタネさん。「The Star」紙から。

(参考資料:2011年4月14日付「The Times」、「The Star」など)

2011/04/06

日本から学ぶ10の教訓

「日本から学ぶ10の教訓」(Ten Things to Learn from Japan)という英語のメールが出回っている。訳してみると。。。

*****

1.平静 THE CALM ‐ 取り乱したり、大げさに嘆いたりしない。悲哀を昇華している。

2. 高潔 THE DIGNITY ‐ 水や食料のために、統制のとれた列を作る。荒々しい言葉や不作法な行為がない。

3. 能力 THE ABILITY - 例えば、信じられないほど素晴らしい建築。建物は大きく揺れるだけで倒れなかった。

4. 気品 THE GRACE - 他の人も買えるように、今必要なものだけを購入する。

5. 秩序 THE ORDER - 商店の略奪行為がない。車はクラクションを鳴らしたり、追い越したりしない。あるのは思いやりだけ。

6. 自己犠牲 THE SACRIFICE - 原子炉に海水を入れるために、50人の作業員が現場に残った。彼らの犠牲にどうやって報いることができるだろう?

7. 優しさ THE TENDERNESS - レストランは値段を下げた。ATMに警備がつかない。強い者は弱い者の面倒を見る。

8. 躾け THE TRAINING - 老人も子供たちも、すべての人が何をすべきなのかちゃんとわかっている。そして、やるべきことをただやる。

9. メディア THE MEDIA - 速報で見事な自制を示した。馬鹿げたレポーターは皆無。冷静な報道のみ。

10. 良心 THE CONSCIENCE - 商店が停電になった時、人々は棚に商品を戻して静かに立ち去った。

これこそが進化した国の好例である。私たちがそこまで到達するのに、一体まだどれだけかかるのだろうか?

*****

ちょっと褒めすぎのようで、こそばい気がする。日本人だって、色々いますよ~。試練の時に、日本人の本当の美しい姿が現れたのか。それとも、東北地方の人々の特性だろうか。

せっかく向上した日本と日本人のイメージ。大切にしたい。

2011/04/05

サイの密猟急増 絶滅を見込んでの在庫増やし?

短い脚に太ったドラム缶のような体を、甲冑で全身武装。鼻には巨大なバラのトゲのような角。

サイは不思議な動物だ。草食動物なのに、何故これほどまで完全装備なのか。アフリカの大自然をバックに草をほおばるサイは、21世紀より恐竜時代の方が似合う。子供が粘土遊びで間違って作ってしまったような不恰好さなのに、サイの周りにはまるで異次元空間で包まれているかのような静寂さがあり、崇高なまでに美しい。それに、デカイ! 畏怖の念に打たれ、何時間でも見とれてしまう。


ところが、いるのである。このサイを虐殺する人間たちが。

15年前は胸を張って、南アフリカの自然保護の手厚さを語ったものだ。密猟者の取り締まりに苦労するケニアやタンザニアと違い、絶滅寸前とされる象やサイがいかに保護されていて、その数がいかに増加しているか誇らしかった。

サイの密猟など、南アフリカでは耳にしたことがなかった。それが、2007年には全国で13頭が殺された。その数は飛躍的に増加し、2010年にはなんと333頭が無駄に命を落とした。

無駄、というのには理由がある。

サイの角の使い道は漢方薬。伝統的には媚薬、最近はガンに効くともされているらしい。成分は爪や髪と同じケラチンだから、勿論、科学的な裏付けはない。

一歩譲って、実際効果があるとしても(だったら、爪を煎じて飲めば良いという気がするが)、やはり無駄死に、なのである。というのは、サイの角は爪や髪と同じで、どんどん伸びて来るからだ。奈良公園のシカみたいなもんですね。角を得るために、殺す必要はないのである。

例えば、サイ農場を展開し、角を切って売れば、角の価格は暴落し、消費者は喜び、密猟もなくなってサイも喜ぶ、という構図が理論的には可能なのである。(現状では、サイの角の売買はワシントン条約で禁止されているから不可能だが。)

野生のサイの角を切り落とし、そこにオレンジ色のプラスチックの角をつけて、殺しても無駄だということを密猟者に知らせるという試みが、東アフリカで行われているという話を聞いたことがある。

南アフリカで密猟が急増した原因は、いくつか考えられる。

汚職で15年の実刑判決を受けた警察長官ジャッキー・セレビ(Jackie Selebi)が、2002年に絶滅種保護班を廃止したことは大きい。

野生動物の生息地域を拡大するために設立された、巨大な越境公園が裏目に出たこともある。

大リンポポ越境公園(Greater Limpopo Transfrontier Park)はそのひとつ。南アのクルーガー国立公園と同じ規模のモザンビークの公園をくっつけたものだ。公園内の国境を取っ払ったので、南アフリカより警備の甘いモザンビークから密猟者が自由に出入りできる。これまでモザンビーク側で逮捕された密猟者は数人、有罪になったのはゼロという。

中国マフィアがサイの絶滅を見越して、在庫確保に精を出しているという説もある。野生のサイが1頭もいなくなってしまえば、値段はつけ放題。その儲けは計り知れない。

南アフリカでは1960年代からの地道な努力が実って、現在、約1万9400頭のシロサイ、1678頭のクロサイが生存しており(どちらも灰色です)、繁殖による増加率は年3%から6%。

沢山いる、と安心してはいけない。南アフリカのシロサイは南部の亜種。北部シロサイ(northern white rhinoceros)は既に絶滅している。アジアに生息するインドサイ、スマトラサイ、ジャワサイも虫の息。

一番数の多い南部シロサイでも、大人になるまでにオス10~12年、メス6~7年かかる。2,3年に1頭しか子供を産まないから、密猟が進めばあっという間にその数は激減してしまう。

密猟取り締まり強化と消費者の啓蒙教育が強く、強く望まれる。

密猟者に殺され、角を切り取られたシロサイ。
 (参考資料:2011年4月1日付「Mail & Guardian」など)