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2018/02/12

ジョーバーグにマリファナ喫茶誕生「420カフェ」

1971年のことだ。米カリフォルニア州の高校生5人が某日午後4時20分、サンラファエル高校のルイ・パスツール銅像前に集合した。マリファナ生産者が残したという地図を手がかりに、捨てられたと噂される大量の大麻を探そうというのだ。5人はこの計画を「420ルイ」(420 Louis)と名づけた。何度か探索を行ううちに、「420ルイ」は「420」に短縮された。

探し物は結局見つからなかったが、「420」(フォーツウェンティ)は「マリファナ」の隠語として若者の間に定着する。

そして、やはり「420」である4月20日は、世界中の反体制文化にとって、いつしか特別な日となった。集まってマリファナを謳歌し、一緒に喫って楽しむ日になったのだ。時刻はもちろん4時20分。集会の多くはマリファナ合法化を求める政治色を帯びるようになる。

ハウスメートやルームメートを求める広告で「420フレンドリー」とあれば、マリファナを喫っても構わないということ。また、「マリファナを持っている」または「喫いたい」と伝えたいときに「420」と言ったりする。

マリファナ喫茶「420カフェ」の外観(Times Live

ジョハネスバーグにマリファナ喫茶が誕生した。その名も「420カフェ」(420 Café)。

2013/05/04

法廷通訳が見つからなくて、起訴取り下げ

2010年11月、ケープタウン行のバスから、サイのツノ12本が見つかった。西ケープ州での道路検問で引っかかったのだ。そのうちの一本は大きすぎてスーツケースに収まらず、半分に切られていた。サイのツノの押収量としては、史上最大である。

逮捕されたのは25歳と32歳のベトナム人男性。

サイのツノは伝統的には媚薬、最近はガン二日酔いの特効薬などとして、中国ベトナムで重宝されている。主な成分は爪や髪と同じケラチン。勿論、医学的効用はない。しかし、迷信のために乱獲が進み、サイは絶滅の危機にある。ワシントン条約で、サイのツノの取り引きは禁止されているから、殆どが密猟・密輸である。

南アフリカは他のアフリカ諸国よりサイの保護に力を入れてきたせいで、世界のサイの73%が南アフリカに生息している。しかし、近隣諸国で取りつくされた感があるせいか、それとも南アフリカで密猟がしやすくなったのか、またはその両方の理由からか、近年、南アフリカでのサイの密猟が増加している。

昨年一年間で、全国で668頭のサイが密猟により命を落とした。今年に入って4か月で、既に70頭以上が殺されている。

サイが殺されるのは、密猟だけではない。「猛獣狩り」ファン相手の合法的狩猟枠を、ツノ獲得に悪用するケースも多い。タイ人の売春婦などを「ハンター」として申請し、合法枠を使って狩猟許可を取り、ツノを取るために殺すのである(サイを「合法的」に「密猟」する方法)。絶滅の危機にある動物に、何故狩猟枠が割り当てられるのか、南ア政府の行動は不可解だ。

そこまでして、こぞってサイ殺害に乗り出すのは、需要があることに加え、逮捕される確立が低く、儲けが莫大だから。

サイの未来に関して暗いニュースが続く中、このベトナム人逮捕は珍しい朗報だった。

ところが、4月29日のことだ。30か月の拘留後、ふたりは釈放された。それも、法廷通訳が見つからない、という理由で。

2012/06/29

FIFA事務局長、南アフリカ国民に

FIFA(国際サッカー連盟)の事務局長、ジェローム・ヴァルケ(Jerome Valcke)が6月15日、南アフリカの国籍を取得した。

「へ~、ヴァルケって、南アに住んでたの?」と一瞬びっくりしたが、実はFIFAの本部があるスイスに在住。

じゃあ、どうして・・・?

南アフリカ内務省のホームページ及び内務省スポークスマン、ロニー・マモエパ(Ronnie Mamoepa)によると、国籍取得には以下の条件を満たさなければならない。

  • 少なくとも5年(南ア人と結婚している人は2年)、南アに住んでいる。
  •  公用言語のひとつが話せる。
  •  性格が立派で、南ア人としての責任をわきまえている。
  •  今後も南アに住むつもりである。
  •  雇用されているか、学生ビザを持ち、収入がある。または、南アに投資し、雇用を創出する。

ヴァルケは今年の初め、南ア女性と結婚したとされるものの、(性格や責任感については不明だが、その他の)条件は満たしていない。

しかも、内務省は永住権申請を処理する事務能力が低いため、条件を全て満たし且つ高いスキルを持つ外国人ですら、南アで永住権を取るのにものすごく時間がかかる。

当然のことながら、「ヴァルケは国籍取得の条件を満たしていないのみならず、順番を飛び越して、永住権どころか、いきなり国籍を与えられた」という批判が出て来た。

大体、フランス人が何故、南ア国籍を取りたいのだろうか。南アのパスポートでは、近隣諸国以外どこに行くにも査証が必要。不便なだけではないか。理由を勘ぐってしまう。

ヴァルケが南アの国籍取得申請をした理由は不明だが、南アがヴァルケに国籍を与えた理由は、「南アが2010年サッカーワールドカップを主催できるように尽力し、南アのサッカーの進歩に貢献したこと」(マモエパ談)。

そんなの、法律で決まっている条件にはないよな~。つまり、特例! ずるい~!

結局、権力とコネ(場合によっては金)さえあれば、国籍だって簡単に取れてしまうということか。

(参考資料:2012年6月29日「The Times」など)

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本:スポーツジャーナリストがFifaの醜態暴露 (2010年6月4日)

2011/11/23

南アフリカ民主主義の死

2011年11月22日火曜日。

ズマ大統領が楽しそうに歌を口ずさみながら、「民主主義」(DEMOCRACY)と書かれたキャンバスを、「機密」(SECRECY)という黒いペンキで塗りつぶしている。『タイムズ』(The Times)紙に掲載されたザピロ(Zapiro)による風刺漫画だ。



2011/05/10

治安相の妻 麻薬密輸で12年の実刑判決

2008年5月21日、31歳になって間もないテサ・ビアトガ(Tessa Beetge)は、希望に満ちてジョハネスバーグの空港を発った。幼い子供ふたりを抱えて離婚し、失業中だったテサに、かつての長年の隣人で、前年再会したシェリル・クウェレ(Sheryl Cwele)が職を紹介してくれたのである。

ロンドンで2週間働くだけで、2万5千ランド(30万円)の報酬。交通費も払ってもらえる。高卒のテサにとっては美味しすぎる話だが、シェリルの夫シヤボンガ・クウェレ(Siyabonga Cwele)は与党ANC(アフリカ民族会議)の大物で、諜報相という重職にある。シェリル自身も市役所の部長クラス。テサの出発前には、両親がシェリルに会いに市役所へ出向いた。疑う理由はない。メールやSMS(携帯電話の短いメッセージ)も優しい言葉と愛情に溢れている。

こんなに親切で、面倒見が良く、コネのある「おばさん」に巡り合えたなんて、ラッキー!と内心思ったことだろう。

ところが、ロンドンに向かうはずだったテサは何故かニューヨーク経由で南米へ送られ、6月13日サンパウロ空港で逮捕される。手荷物から10キロのコカインが見つかったのだ。

2011/03/02

アフリカの子鬼「トコロシ」 殺人容疑者の手下?

南アフリカに住む醍醐味は、奇想天外な出来事が日常的に起こること。欧米や日本と変わりない生活を送っていてつい油断すると、いきなりアフリカに鋭いパンチを食らわされる。

今日の『スター』紙で見つけた小さな記事。殺人事件の裁判にやってきた地域住民が、ピーターマリッツバーグ下級裁判所の外でデモ。裁判所に請願書を提出するため、村から45キロも歩いてやってきた。

嘆願書の内容は、「被告が保釈されると、トコロシを操って裁判書類を盗ませるから、保釈しないでくれ」というもの。これだけでは、何のことかチンプンカンプンだろう。

トコロシ(Tokoloshe、Tokolosh、Tokoloshi、Thokolosi、Tikalosheと綴りは様々)は南部アフリカ各地で耳にする、いたずら好きの子鬼みたいなもの。ベッドの下に潜んで眠っている夢を聞き出す才能があり、それを使って悪事を働いたりする。トコロシ予防には、ベッドの下にレンガを置いておく。

1994年の南アフリカ第1回民主総選挙の折には、「投票用紙を記入するテーブルの下にトコロシが潜んでいて、どの党に投票したか探り出す。無記名投票しても無駄」という噂が飛び交った。自分の党に投票させようとする政党の苦肉の策とされるが、多くの人が信じたらしい。

トコロシの役割や働く悪事には色々な説がある。トコロシ自体も、子鬼のように元々そういう存在だったという説や、死人の目と舌を除去してから作られた一種のゾンビーという説などある。大きさがコビトサイズということでは、どの説も一致してる。また、独自で悪さをするとも、サンゴマ(伝統的祈祷師)の使い走りとも言われる。

この事件の被告は、48歳の裕福なサンゴマ、ムドゥドゥジ・マンケレ(Mduduzi Manqule)と30歳のロジャー・トゥシ(Roger Tsusi)。トゥシ被告のガールフレンドの冷凍庫から、ロイサ・ジョクウェニ(Loyisa Jokweni)さん(18)の頭が見つかったことに端を発する。

金持ちになりたかったトゥシ被告がマンケレ被告に相談に行ったところ、ジョクウェニさんの頭をはねて、蛇を巻きつけ、冷凍庫に入れるよう指示されたという。凍った蛇が巻きついた凍った頭を見つけて怒り狂った隣人たちは、マンケレ被告の家とトゥシ被告のガールフレンドの家に火を放った。

ふたりは逮捕されたものの、住民たちはマンケレ被告が手下のトコロシを使って、裁判書類を盗ませるのではないかと心配。そこで、裁判所にマンケレ被告を保釈しないよう訴え出たわけである。

ベッシー・ドゥトイ(Bessie du Toit)裁判長(名前からすると、アフリカーナかカラード)は、住民の言い分には根拠がないとしてマンケレ被告を保釈。トゥシ被告の保釈願いは却下された。

裁判は3月30日まで延期。さて、裁判書類はそれまで無事だろうか。

(参考資料:2011年3月1日付「The Star」など)

2011/02/06

オンラインショッピングで大麻 宅急便で配達

公然とオンラインショッピングで大麻を売るサイトが、南アフリカに少なくともふたつはある。

ひとつはハウテン州のフォーブラザーズ(www.4brothers.co.za)。その名の通り、4人の兄弟が2010年9月にHPを開設。バラエティに富んだ商品を説明書きと写真で紹介。「ハンマー」(ハンマーで殴られたような衝撃感があるのだろうか)、「オーロラ」(「とても素敵なメンタルハイ」)、「ビルダー」、「ベラドンナ」。。。。「サトリ」なんて商品もある。

お値段は1グラム125ランド程度(1500円)。「高いが路上で買うより安全」と消費者には好評だ。

南アフリカでは大麻は違法。それをインターネットで公然と販売する裏には、確固としたポリシーがあった。「大麻は安全で健康的だから、合法にすべき」という信念である。栽培・販売を合法化することで、南アの経済発展にも貢献できるという。

ジェイコブ・ズマ大統領や検察庁(National Prosecuting Authority:NPA)に合法化を求める手紙を書いたが黙殺されたので、インターネット販売を開始した。

フォーブラザーズ商品をオンラインで購入するには、18歳以上の身分証明を提示し、以下の免責条項を受け入れる。

「私は個人使用の目的で大麻を購入しようとしています。犯罪を犯す意図は全くありません。また、政府による不法且つ不当な禁制が、大逆であることを理解しています。」

一方、「南アフリカ大麻大使館」と自称するのは、www.cannabis.co.net。

「このウェブページと掲載情報は、成熟した精神を持つ人間が対象」とし、「未成熟の精神を持つ成人はこのページから退出し、真実を扱えるほど成熟してから戻って来てください」とある。

南ア警察のエリート捜査班で組織犯罪・経済犯罪を担当する「ホークス」のスポークスマンによると、今のところ捜査を開始する予定はない。それどころか、「違法なことを公然とするのは、『ハーイ。僕は犯罪者です。逮捕してくださ~い』と言ってるみたいで、馬鹿げている」とあきれる。

NPAでは、警察が動き出さないことには、起訴するかどうか決められないという。

「犯罪」を犯す側と取り締まる側の双方がこうまでおっとりしているのは、日本と違って、大麻が大したことと思われていないからだ。簡単に入手できる、安価なリクリエーションドラッグなのだ。

また、歴史的背景もある。反アパルトヘイト運動の中で、強力な市民社会が形成された。特に都会に住む人々は、国家権力による抑圧に敏感で、言論の自由や人権の保護に熱心である。

売春や大麻の合法化が活発に議論され、大麻が教えの中心をなすラスタ主義の信奉者が、トレードマークの赤、黄、緑のニットの帽子をおおっぴらにかぶっているお国柄でもある。

大麻の合法化を求めるウェブサイト「Below the Lion」は、4人兄弟の写真入りインタビューを掲載している。
http://www.belowthelion.co.za/a-spliff-a-word-with-4-brothers-an-online-coffeeshop-for-south-africans/

(参考資料:2011年1月23日付「Sunday Times」など)

2010/12/23

ゲイカップルの子作り作戦 代理母にお願い

国民の大多数の人権を無視したアパルトヘイト。そんな歴史を持つ南アフリカの法律は、マイノリティや弱者の保護に手厚い。

例えば、同性愛者の権利。ゲイカップルには異性間夫婦と同じ権利が保証されている。また社会的にも、特に都会の白人社会では偏見があまりなく、ゲイであることをオープンにしている人が多い。

ただ、法律が整っていても、社会的に受け入れられていても、悩みはある。ゲイカップルの多くにとって頭が痛いのがふたりの子供を持つこと。愛する人と家庭を築きたいのはやまやまだが、オス同士、メス同士では生物学的に不可能だからだ。

一般的な解決策は二通り。ひとつは養子を貰うこと。もうひとつは、カップルのうち、ひとりの卵子または精子を使うこと。女性の場合は精子銀行を利用したり、家族・友人に精子を提供してもらい自分で子供を産むことが可能だ。

友人のレズビアンカップルはこの手を使って、ふたりがひとりずつ子供を産んだ。精子の提供者は人種が違う男性ふたり。つまり、母親ふたり、父親なし、肌の色が違い、血がつながっていない子供2人という家族構成になる。

「ゲイは社会風紀・秩序を乱す!」と目くじらを立てる人々などは、「家族」とも認めないかもしれない。しかし、親がそれを当然のように自然に振舞っているし、また、家族・親類、友人、近所の人、学校の先生、クラスメート、クラスメートの親など、この家族を取り巻く人々が皆、ごく普通の家族として受け止め、受け入れているから、子供たち自身も屈託がなく、伸び伸び育っている。

男性カップルの場合はもっと面倒だ。まず、赤ちゃんを産んでくれる女性を見つけないといけない。その女性の子供として産んでもらい、出産後、養子手続きをする。代理母は探しは大抵、専門業者を使う。料金は5万ランド(60万円)程度。

ところが、2005年に子供法(Children's Act)が改正、今年4月に施行された。その38条19項は、代理母になることで収入を得ることを禁じている。

妊娠・出産は女性にとって大仕事である。重い悪阻、妊娠中毒症、難産などの可能性に加えて、産後の肥立ちが悪いとか、体の線が崩れるという心配もある。コミットする期間も長い。妊娠期間9か月半、その前の人工授精から考えると、場合によっては1年を超える。良いお金になるならまだしも、喜んでしかも無料で、他人の子供をお腹にかかえてくれる女性はザラにはいない。よっぽど妊娠好きか奇特な人であろう。

子供を切に欲しがるカップルから巨額の料金をむしりとる悪徳業者をなくすことが主眼だろうが、お蔭で代理母になってくれる人を見つけるのがむずかしくなった。

新しい子供法にはその他、代理母に関する次のような規定がある。
  • 代理母には生存する自分自身の子供が最低ひとりいないといけない。
  • 代理母が結婚している場合は夫の同意書が必要。
  • 依頼するカップルには、ふたりとも出産することができず、その状態は恒久的であり、戻すことができないという医学的理由が必要。
  • 依頼カップル両方の生殖体を用いる。妥当な生物学的または医学的理由がある場合は、ひとりの生殖体でも構わない。
  • 関係者全員が合意書に署名し、裁判所がそれを認可しなければならない。
  • 胎芽が母体に移される以前に、裁判所が代理母に対して、親としての権利・義務を放棄するよう命令を出さなければならない。
  • 代理母は出産時に子供を引き渡す。子供は生まれた瞬間から依頼カップルの子供となり、養子手続きは不要。
  • 代理母及び依頼カップルの少なくともひとりは南ア国籍。
ジョハネスバーグ在住の某男性カップルはラッキーにも代理母を見つけることができ、この度、高等裁判所で代理母契約の認可を受けた。卵子は精子を提供しないパートナーの姉妹から提供してもらうため、遺伝的には双方の血を引いている。

子供を持とうと決めてから、代理母と契約を交わすまでに7年かかったという。同じことをまた繰り返すのは大変なので、三つ子が欲しいとのこと。代理母には妊娠中、「脳の働きを高める」モーツァルトを聞いてもらう予定。既にそのためのiPodを用意しているとか。

(参考資料:2010年12月22日付「The Star」など)

2010/10/17

公用語が11 南アフリカの法廷通訳

南アフリカには公用語(official language)が11ある。このうちヨーロッパ系は、英語とアフリカーンス語。残りの9つはアフリカの言葉。ズールー語、コサ語、スワジ語、ンデベレ語がングニ系、北ソト語、南ソト語、ツワナ語がソトツワナ系、シャンガーン族の話すツォンガ語がツワロンガ系、それにヴェンダ系唯一の言語であるヴェンダ語だ。この11以外を第一言語とする南ア国民は、全体の1%以下しかいない。また、大部分の南ア人は11の公用語のうち2つ以上を話す。

勿論、標識やラベルや注意書きなど、全ての記載を11言語で行うのは現実的でないので、大抵の場合、英語とその地域や職場で良く使われる言語が併記されている。

南アフリカでは、自分で選んだ言語で裁かれる権利を持つ。これは憲法で保障されている。つまり、被告や証人が英語以外の言語を選んだ場合、通訳が必要になるわけである。選ぶ言語は、南アの公用語である必要はない。日本語でもタガログ語でも、アマゾンやパプアニューギニアの言葉でも構わない。

最近、南アにおける法廷通訳の調査を行った南アフリカ大学のローズマリー・モエケツィ教授によると、法廷通訳は一般に思われているよりずっと難しい。「公の場で行われ、またかなりのストレスがある。リハーサルなし、ぶっつけ本番で対応しなければならない」からだ。通訳に被告の命がかかることだってあり得る。

南ア法務省では2000名近くを通訳として使っている。しかし、法廷通訳資格試験があるわけではないため、南アの法廷通訳の質はかなりバラバラだという。とすると、ひどい通訳にあたった被告は悲惨である。お金があれば優秀な通訳を雇うことも可能だが、公選通訳に頼らざるを得ない貧しい人々にはどうしようもない。

南アフリカ大学では3年の法廷通訳の学位コース、ヴィットヴァータースランド大学とポートエリザベス大学では2年のディプロマコースを始めたものの、いずれも生徒数の不足から閉鎖に追い込まれた。

質の良い法廷通訳を確保するには、待遇改善から取り組む必要がある。プロの通訳にとって、法廷通訳は収入にならない。公選だと恐らく料金がとても安いだろうし、裁判はその日になって延期ということが多いので、予定が立てにくい。頼まれて3日間空けておき別の仕事を断ったのにドタキャン、ということも大いにあり得る。そんな場合でも収入を保証されないと引き受けにくい。

それほどポピュラーでない言語の法廷通訳をいつでも引き受けることが出来るのは、小銭を稼ぎたい失業者とか、ボランティアに意欲のある主婦くらいではないか。法務省で使う通訳は仕事を持つ人が多いから、2000名近く名簿に載っていても、肝心の時に引き受けてもらえるとは限らない。実際、通訳手配に裁判時間の10%が費やされているという。

実は私も、一度だけ法廷通訳を務めたことがある。原告側の証人が日本人だったのだ。大手企業の責任ある職にある人だ。

裁判を遅らせたいのか、この証人に証言して欲しくないのか、被告側の弁護士が異議を唱えた。「日本には方言が沢山あるから、証人と通訳の間で言葉が通じない可能性がある」というのだ。裁判長が日本語を知らないことを盾に取ったハッタリ。めちゃくちゃな論理もいいところである。

遠回りなようでも色々な人生経験を積んだり、一見無駄な雑学を蓄積したのが変なところで役に立った。おもむろに裁判長に向かい、明治時代の標準語整備を説明し、これま政府などの通訳を務めた経験を滔々と述べた。「少なくとも日本の政府とあなたの国の政府は、私を通訳として信頼してくれている。」 実は内心冷や汗もの、こちらもハッタリだったが、裁判長はにっこりうなずき、ゴーサインを出してくれた。

(参考資料:2010年10月15日付「Mail & Guardian」など)