2011/02/23

絶滅寸前のブスー語を救おう カメルーン

私のお気に入りのウェブサイトに、www.busuu.comがある。ミクシーやフェースブック同様のソーシャルネットワークサービス(social network service:SNS)だが、外国語を学びたい人が対象というのがミソ。

オファーされているコースは英語、スペイン語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ポルトガル語(ブラジル)、それにロシア語。学びたい言語と話せる言語(母国語及び流暢に話せる言葉)を登録する。学ぶ言語はいくつでもOK。無料。

文法や語彙はインターアクティブなオンライン学習。SNSの長所が生きるのは、作文と会話。ネイティブスピーカーが作文の添削をしてくれ、また、オンライン中のネイティブスピーカーに、「会話の練習相手になって」とリクエストが出せる。

学習している言語の添削をしてもらう代わりに、自分が出来る言語の添削をしてコミュニティにお返し。勿論、普通のSNS同様、「お友達」になることも可能。仲間と励まし合いながら、外国語が習得できる。

日本語しか出来なくても、気後れする必要はない。日本語はオファーされていないものの、会員の中には日本語を学んでいる者もいる。その人たちの質問に答えたり、会話の相手になってあげれば良い。

busuu.comは2008年5月、リヒテンシュタイン人のアドリアン・ヒルティ(Adrian Hilti)とオーストリア人のベルンハルト・ニーズナー(Bernhard Niesner)が設立した。ふたりともまだ30代。本部はスペインのマドリッド。まだ設立間もないのに、既に数々の賞を受賞している。

さて、HPの名前になっている「ブスー」(Busuu)とは何のことか。

実は、カメルーンで話されるバンツー系の言語だ。

話される、といっても、1986年に8人しかいなかったネイティブスピーカーは、2005年には僅か3人に減少。まさに絶滅寸前である。

busuu.comでは「ブスー語を救え」(Save Busuu)キャンペーンを開始。ブスー語の危機に対する意識を高め、ブスー語学習者を増やそうという狙いだ。そのためにHPと「ブスーの歌」のプロモー ションビデオを作成した。(HPでは8人のネイティブスピーカーがいることになっている。)

HPはhttp://save.busuu.com。歌の英語版はこちらをどうぞ。軽快でコミカル。かなり笑えるので、是非見てください。「ブス、ブッスー!ブス、ブッスー!」と思わず口ずさんでしまうかも。

2011/02/15

アニー・レノックスの恋 お相手は南ア人婦人科医

一般庶民にとって、セレブはテレビで見たり、新聞・雑誌で読む遠い世界の人々。熱心なファンならファンクラブに入ったり、コンサートに行ったりして、何らかの接触はあるかもしれない。だが、恋い焦がれる対象のセレブにとって、ファンは大切なお客さまながらも、個別の人間というよりone of them。生身の人間だから「つながり」があるといくらファンが錯覚しても、セレブというのは現実味のない超日常的存在なのである。

昨年、日本人の某歌手・俳優と仕事をする機会があった。日本を出て24年の浦島太郎状態の私にとっては単なるクライエントだったが、その後、他の日本人に何気なくその話をすると、水戸黄門の印籠状態になって驚いた。今「旬の人」とのこと。芸能界の有名人が、業界以外で恋をするのは難しいだろうな、と妙に納得した。

ところが、南アフリカの一医師が元ユーリズミックス(Eurythmics)のアニー・レノックス(Annie Lennox)と大恋愛中という。

ミッチ・ベッサー(Mitch Besser)さん。婦人科医。アニー・レノックスと同じ56歳。既婚で、19歳と16歳の息子がいる。ケープタウン在住。

医師と患者の関係ではない。

ベッサー医師はHIVウィルスの母子感染を減らすことを目的に、2001年、ケープタウンで「マザーズ・ツー・マザーズ」(mothers2mothers)というサポートグループを設立。今では、9か国704箇所で、1700名のHIV陽性の母親を雇用するまでに成長した。

アニー・レノックスとは2年前、HIV陽性の母親たちを助けるための慈善事業で出会った。

実は、南アフリカは知る人ぞ知る、欧米セレブに人気の地。動機は主に、ふたつに分かれる。

先進国並のインフラを持ち、ヨーロッパと時差が殆どなく、風光明媚の上、パパラッチがいない。北半球と季節が逆なので、寒い冬を逃れるにも最適の場所。ダイアナ妃の弟をはじめとして、家や別荘を持つセレブが人知れずかなりいる。一番人気はケープタウンだ。

また、「アフリカ」ということで、慈善に熱心なセレブにも評判が良い。アパルトヘイトで名前が売れていること、先進国の設備を享受できること、それに「マンデラ」の名声などのせいか、結構有名な歌手や俳優などが慈善事業で訪問している。その証拠に、南アを訪問するセレブは「マンデラ詣で」に余念がない。

マンデラのお気に入りの故マイケル・ジャクソンやナオミ・キャンベルなど、しょっちゅう来ていた。

動機はどうあれ、それが南アフリカやアフリカに世界の目が向く助けになれば良い、と私は思っている。恐らくマンデラも同じ気持ちではないか。

但し、決して、アニー・レノックスがそういう軽々しい気持ちで慈善に関わったと言っているわけではない。彼女の個人的な事情はまったく知らない。

ともあれ、ベッサー医師は既に、家族が住む家を立ち退いたという。奥さんのデブラは、結婚生活が以前から破綻していたことを認めながらも、かなりショックを受けているらしい。

「マザーズ・ツー・マザーズ」のHPはこちら。
http://www.m2m.org/home

(参考資料:2011年2月13日付「Sunday Times」など)

2011/02/11

マドンナのヨガの先生 ケープタウンの旧黒人居住区に教室開設

カエリチャ(Khayelitsha)はケープタウンから約40キロに位置するタウンシップ。

タウンシップとは、アパルトヘイト政権が都市に隣接して設立した非白人居住区。大部分は黒人用だが、カラード用、インド系用などもあった。(中国人用タウンシップも全国に4か所設立されたが、機能していなかった。)

コサ語で「新しい家」(new home)を意味するカエリチャは、1980年代の初めに作られた。急速に拡大しており、現在では100万人以上が居住。この町に舞台を移した、ビゼーのオペラ「カルメン」の映画版「uCarmen eKhayelitsha」(「カエリチャのカルメン」日本未公開)は、2005年、ベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞を受賞している。

住民の60%が30歳以下。失業率推定30%。フォーマルセクターで働く人は8%に過ぎないとされる。(フォーマルセクターについては、2011年1月25日付「納税者数が73%も増加 それでも終業人数の半数以下」参照)

このタウンシップにヨガクラスを開設したアメリカ人がいる。ショーン・コーン(Seane Corn)さん。マドンナ、スティング、ロバート・ダウニー・ジュニア、ドリュー・バリモアなど、セレブにヨガを教えてきたことで有名。

コーンさんはやはりヨガのインストラクター、スザンヌ・スターリング(Suzanne Sterling)さんと一緒に、OTM(Off the Mat, Into the World)という団体を主宰している。OTMの事業のひとつが、グローバル・セヴァ・チャレンジ(Global Seva Challenge)。ヨガをする人々が資金を募って、世界中の小さいプロジェクトを支援する。「Seva」とは「無償の奉仕」を意味する、ヨガの教えのひとつ。

今回、ケープタウンのアースチャイルド・プロジェクト(Earthchild Project)がグローバル・セヴァ・チャレンジから14万ランド(約170万円)の援助を受け、カエリチャのサクムランデラ小学校(Sakumlandela Primary School)にヨガスタジオを建設したのである。

何故、一見ヨガとは無縁の貧しい黒人居住区に、ヨガクラスを開設したのか?

コーンさんの言い分はこうだ。貧困が絶望感を生み出し、それが暴力、ギャング、麻薬、売春、エイズにつながる。ヨガの教えは犯罪、エイズ、失業に苦しむコミュニティを癒す。

かなり短絡的で大雑把。よく言えば、おおらか。どの程度、現地の現状やニーズを理解・把握してのことなのか疑問だ。

しかし、これがきっかけになって、南アフリカ、ひいてはアフリカに世界の目が向けば喜ばしい。

マドンナが「心の平和」を見つけるのを助けたコーンさん。ヨガの力で、カエリチャを犯罪のない平和な町に変えることができるか。

(参考資料:2011年2月11日付「The Times」など)

2011/02/06

オンラインショッピングで大麻 宅急便で配達

公然とオンラインショッピングで大麻を売るサイトが、南アフリカに少なくともふたつはある。

ひとつはハウテン州のフォーブラザーズ(www.4brothers.co.za)。その名の通り、4人の兄弟が2010年9月にHPを開設。バラエティに富んだ商品を説明書きと写真で紹介。「ハンマー」(ハンマーで殴られたような衝撃感があるのだろうか)、「オーロラ」(「とても素敵なメンタルハイ」)、「ビルダー」、「ベラドンナ」。。。。「サトリ」なんて商品もある。

お値段は1グラム125ランド程度(1500円)。「高いが路上で買うより安全」と消費者には好評だ。

南アフリカでは大麻は違法。それをインターネットで公然と販売する裏には、確固としたポリシーがあった。「大麻は安全で健康的だから、合法にすべき」という信念である。栽培・販売を合法化することで、南アの経済発展にも貢献できるという。

ジェイコブ・ズマ大統領や検察庁(National Prosecuting Authority:NPA)に合法化を求める手紙を書いたが黙殺されたので、インターネット販売を開始した。

フォーブラザーズ商品をオンラインで購入するには、18歳以上の身分証明を提示し、以下の免責条項を受け入れる。

「私は個人使用の目的で大麻を購入しようとしています。犯罪を犯す意図は全くありません。また、政府による不法且つ不当な禁制が、大逆であることを理解しています。」

一方、「南アフリカ大麻大使館」と自称するのは、www.cannabis.co.net。

「このウェブページと掲載情報は、成熟した精神を持つ人間が対象」とし、「未成熟の精神を持つ成人はこのページから退出し、真実を扱えるほど成熟してから戻って来てください」とある。

南ア警察のエリート捜査班で組織犯罪・経済犯罪を担当する「ホークス」のスポークスマンによると、今のところ捜査を開始する予定はない。それどころか、「違法なことを公然とするのは、『ハーイ。僕は犯罪者です。逮捕してくださ~い』と言ってるみたいで、馬鹿げている」とあきれる。

NPAでは、警察が動き出さないことには、起訴するかどうか決められないという。

「犯罪」を犯す側と取り締まる側の双方がこうまでおっとりしているのは、日本と違って、大麻が大したことと思われていないからだ。簡単に入手できる、安価なリクリエーションドラッグなのだ。

また、歴史的背景もある。反アパルトヘイト運動の中で、強力な市民社会が形成された。特に都会に住む人々は、国家権力による抑圧に敏感で、言論の自由や人権の保護に熱心である。

売春や大麻の合法化が活発に議論され、大麻が教えの中心をなすラスタ主義の信奉者が、トレードマークの赤、黄、緑のニットの帽子をおおっぴらにかぶっているお国柄でもある。

大麻の合法化を求めるウェブサイト「Below the Lion」は、4人兄弟の写真入りインタビューを掲載している。
http://www.belowthelion.co.za/a-spliff-a-word-with-4-brothers-an-online-coffeeshop-for-south-africans/

(参考資料:2011年1月23日付「Sunday Times」など)

2011/02/04

水道料金24億3410万円を一般家庭に請求 暴走続くジョハネスバーグ市

めちゃめちゃな請求書を送って来るジョハネスバーグ市が、市民の不満、マスコミの批判の集中砲火を受けてはや数年。改善の気配ゼロの中、先週、アモス・マソンド(Amos Masondo)市長とパークス・タウ(Parks Tau)財務部長が「危機」の存在を否定。それどころか、「ささいな問題が若干あるだけ」とうそぶいた。

これに真っ向から挑戦したのが、ブライアンストン地区に住むリチャード・オフレアティ(Richard O'Flaherty)氏。ジョハネスバーグ市に委託された未払い料金取り立て会社「インクェスト」(In-Quest)から、2億284万1609ランド(24億3410万円)の水道代請求が送られてきたというのだ。

『スター』紙の計算では、オリンピックプールを5439個一杯にできる水量、市水道局の年間予算の8%に当たる金額。

最初は大ショックを受けたオフレアティ氏。正気に返って、あまりのバカバカしさに、笑いがとまらなくなった。

早速、インクェスト社に電話。3回かけてやっと電話に出たアシュレイ・シン係員は、オフレアティ氏がこれまでの水道代をすべて払っていると請け合い、システム上の間違いを訂正すると約束してくれたが、その後同社とは連絡が取れなくなった。

どこからこんな間違いが起こったか。

オフレアティ氏の携帯電話に送られたメッセージはこれ。

Dear RICHARD VINCENT O'FLAHERTY-COJ Acc no.202841609 Reminder to pay outstanding balance of R202,841,609.00 or contact In-Quest 0114759919 or 0114758608

気がつきましたか? 気がつかない? もう一度じっくり読んでください。

そう、口座番号と請求額が同じ数字。口座番号を請求額として、インプットしてしまったのである。

オフレアティ氏の例は、氷山の一角。昨年11月以来、4万世帯以上が電気または水道を止められたが、その多くはちゃんと料金を支払った、またはとても払えない法外な料金を請求された挙句のことだ。

ジョハネスバーグ市の問題は、地方政府・中央政府に強力なコネを持つものの、経験も実績もない企業がITシステム改革の入札を得たことにあるという。

同じような問題が全国の自治体で起こっているため、地方自治体を担当するシケロ・シケカ(Sicelo Shiceka)大臣は、現在地方自治体の管轄となっている電気・水道・固定資産税などの取り立てを、国税庁に任せることを検討中。

さすが『メール&ガーディアン』紙に「クビ」を宣告されただけのことはある(2010年12月28日付「内閣の通信簿 「メール&ガーディアン」紙」参照)。自治体の行政力向上努力は最初から頭になく、他省に丸投げするつもりらしい。

国税庁は確かに、南アフリカで最も有能な(「唯一機能している」と言う皮肉屋も多い)役所だが、余分な仕事を任されすぎて、共倒れになることがないよう祈っている。

(参考資料:2011年2月1日付「The Star」、2月2日付「The Times」など)