2017/10/30

南アフリカの公的医療 悲惨な現実(1)お父さんが入院

南アフリカの公立病院に行ったら、元気な人でも病気になってしまう。」

どういう話の展開だっただろうか。エチオピア旅行中、誰かがそんなことを言った。冗談めかしたかなり本気の言葉に、その場にいた南アフリカ人たちは全員が真顔で頷いた。

その数日後、エチオピアから戻って来た私を、パートナーのペッカが空港まで迎えに来てくれた。

「お父さんが昨日入院したらしい。今からお母さんと病院に着替えを持って行く。」

連絡があったばかりで、詳しい事情はよくわからないという。ちょっと風邪気味だったが、お父さんが心配だ。「着替えを持って行くくらいなら」と一緒に病院へ向かうことにした。

ジョハネスバーグの我が家から別の町ベノニのエミリア(お母さん)宅まで車で40-50分。着替えどころか、なぜか上布団や枕まで用意してある。そこから隣町ボックスバーグにある国立病院「タンボ記念病院」(Tambo Memorial Hospital)まで更に30分。保健省のウェブサイトによると、1905年設立、「機能している」ベッドが540床という総合病院だ。


アケ(お父さん)は大の病院嫌い。それでもしばらく下痢が続き心配になったので、前の日の10月9日、病院に行ったという。丸一日待ってやっと診察を受ける。腹部に固まりがある。悪性腫瘍かもしれないから検査要。即入院となった。

エミリアはそのまま帰宅。翌朝友人に運転してもらって病院へ。アケのいる大部屋に足を踏み入れてびっくり。ここ数日、冬並みに寒くなっていたのだが、アケには上布団もかかっていない。ズボンとパンツを脱がされオムツ姿。パジャマも着せてもらえず、下半身は剥き出しのまま。暖房はない。体が石のように冷たくなっていた。82歳の病気の老人がそんな有様で、一晩放っておかれていたのだ。(数日後、母親が国立病院に入院したことのある友人が、「枕と上布団は持参することになっているのよ。食事がひどすぎるので、食べ物も毎日持って行ったわ」と言っていた。)

2017/10/27

フィンランドの夏が世界一である10の理由

日本で夏至の頃、北欧諸国では「ミッドサマー」が祝われる。夏が超短い北の国の人々にとって、ミッドサマーは一年の中でも大切なお祭りだ。

Vivasというウェブサイトで、「フィンランドの夏が世界一である10の理由」という記事を見つけ大笑いした。ひとりで笑うのはもったいないので、ご紹介する。(フェイスブックのコミュニティ「All Things in Finland-Suomi」でも紹介されていたから、フィンランド人自身も可笑しいと思ったのだろう。)

1.夏は一年で一番いい日だから

「夏が待ち遠しい。一年で一番いい日だから。」

一瞬、「日」ではなく「季節」のタイプミスではないかと思ったが、実は、「フィンランドには夏が一日しかない」というジョーク。

2017/10/23

娘をレイプした男たちを殺傷した「ライオン・ママ」 不起訴に

ライオン・ママ」の異名を持つ女性がいる。南アフリカ東ケープ州在住の56歳。性犯罪の被害者となった娘のアイデンティティを守るため、実名は公表されていない。

ライオン・ママが住むのは、舗装された道路まで歩いて20分という、小さな村。こんな村でも、携帯電話が普及しているおかげで、ライオン・ママにも連絡がつく。

2017年9月2日、夜中の1時をちょっとまわった時、ライオン・ママの電話が鳴った。電話をしてきたのは、3キロ離れたところに住む同じ村の女性。ライオン・ママの娘(27歳)が10時から泣き叫んでいるという。レイプされているらしい。

(お互いを知り尽くしているであろう小さな村の出来事なのに、誰もその家に行って止めようとか、警察を呼ぼうとかせず、3時間も泣き叫ぶ声が続いてようやく、その家の隣人が被害者の母親に電話という状況はちょっと変な気がするが、その辺の事情はわからない。娘が諦めて途中からおとなしくなっていたら、連絡は来なかったのだろうか。)

ライオン・ママは即座に地元の「ポリスフォーラム」(警察と協力して治安を守る住民団体)担当者に電話したが、応答なし。しばらく鳴った後、留守電メッセージに切り替わった。

ライオン・ママはパジャマ姿のまま、包丁をつかみ、副村長の家に走った。途中で村の若者がひとり加わり、3人で犯罪現場へ急ぐ。

電話をしてくれた女性の家に到着。娘の叫び声が闇を切り裂くように貫く。副村長は「ポリスフォーラムに通報する」と家を出た。

残された3人はライオン・ママの携帯電話の光を頼りに、真っ暗な隣家に近づく。隣家の女性と若者に出口を見張るよう頼んで、ライオン・ママは単身、家の中に乗り込んだ。

2017/10/18

ロッシーニのシンデレラ METライブビューイング

METライブビューイング(Metropolitan Opera Live in HD)今シーズン最後の出し物は、ジョアキーノ・ロッシーニ(Gioachino Rossini)の『チェネレントラ』(La Cenerentola)。童話『シンデレラ』をオペラ化したもの。

といっても、子供向けのオペラではない。妖精のお婆さんとか、カボチャの馬車とか、12時までの時間制限は出てこない(以上はディズニーのアニメ版のお話)。ロッシーニは魔法の要素をなくし、大人向けの素敵なロマンチックコメディーに仕上げている。3週間でこのオペラを書き上げた時、ロッシーニは弱冠25歳。前年に発表した『セビリアの理髪師』(Il Barbiere di Siviglia)が大ヒットし、ノリに乗っていた時期だ。

主人公はアンジェリーナ(Angelina)。いいところのお嬢さんだったが、寡婦になった母親がドン・マニフィコ(Don Magnifico)と再婚したことから、運命が狂ってしまう。落ちぶれた男爵ドン・マニフィコには先妻との娘、クロリンダ(Clorinda)とティスベ(Tisbe)がいる。いずれも高慢で我儘で贅沢好き。ドン・マニフィコはアンジェリーナの母親が亡くなった後、実の娘に贅沢をさせるため、アンジェリーナが受け継いだ遺産を勝手に使い果たした。ソファもボロボロの家に住む男爵はメイドも雇えないらしく、アンジェリーナを召使いとしてこき使い、ボロを着たアンジェリーナを「チェネレントラ」(灰かぶり)と呼んで馬鹿にしている。(暖炉の掃除などで、灰だらけになってしまうのだろうか。)おとなしくて心優しいアンジェリーナは、いつかこの環境から抜け出ることを夢見つつも、黙って耐えている。

METライブビューイング最新情報

一方のラミーノ(Ramiro)王子。後継ぎを心配する重病の父王から「すぐ結婚しなければ勘当する」と脅され、しぶしぶ嫁探しをしている。「愛していない相手でも、この際仕方がない」と嘆きながら、宮殿で舞踏会を開き、一番美しい娘と結婚することにした。勿論、「一番美しい」といっても、小作民の娘が玉の輿に乗るわけではなく、貴族や有力者しか対象にならないのだろう。王子の家庭教師を務める哲学者のアリドーロ(Alidoro)が乞食に身をやつし、家族構成を記録した台帳を頼りに、適齢期の娘がいる家庭をまわって下調べをしている。