世界中でバデシ語を話せるのは、パキスタン北部山岳地帯のビシグラム(Bishigram)谷に住む3人の老人だけ。この3人も、日常的にバデシ語を話すことがあまりないため、単語をしょっちゅう忘れるという。
バデシ語を話す最後の3人 |
バデシ語はインド・イラン語派に属する。2000年には約2800人の話し手がいた。
ビシグラム村でも、1世代前は村中がバデシ語を話していた。といっても、10家族くらいしかいなかったらしい。ビシグラム谷は過疎の村。嫁不足のためトルワル(Torwali)人を妻として迎え入れたことから、バデシ語が話されなくなったという。子供たちは母親の言語トルワル語を覚えて育つ。また、この辺りでは、トルワル語を話す人の方がバデシ語を話す人よりずっと多い。
ビジグラム谷の村 |
更に、ビシグラム谷にはこれといった産業がないことから、住民たちは観光産業で栄える近くの町で働く。そこで話される言語はパシュトー(Pashto)語。
かつてバデシ語を話していたビシグラム谷の住民にとって、トルワル語やパシュトー語が第一言語や共通語になってしまった。ビジグラム谷以外でも同様のことが起こったのだろう。今では、バデシ語を話すのはビジグラム谷に住む3人の老人しかいないのだから。
この3人が亡くなったとき、「ミーン・バデシ・ジベ・アーサ」(Meen Badeshi jibe aasa)=「私はバデシ語を話せます」と言える人がいなくなる。バデシ語は死に絶えてしまうのである。それとともに、バデシ語でしか表現できなかった感情が、地球上から消え失せてしまうのだろう。
ビジグラム谷の若い世代 |
バデシ語はこの番組の中で聞くことができます。
【参考資料】
"Badeshi: Only three people speak this 'extinct' language", BBC News(2018年2月26日)
"The Badeshi People in Bishigram and Tirat valley,Swat"
【関連記事】
フィンランド語で「犬」を何というか (2017年7月6日)
西アフリカで『ハムレット』 「常識」の適応範囲 (2012年7月4日)
絶滅寸前のブスー語を救おう カメルーン (2011年2月23日)
0 件のコメント:
コメントを投稿