2018/10/18

パスポートのパワフル度 日本がシンガポールを抜いて世界一に。南アは52位

今月、日本人は査証なしでミャンマーに行けることになった。これにより、日本人が査証なしで訪問できる国は190か国。189か国のシンガポールを抜いて、世界一! 

第3位はドイツ、韓国、フランスの188か国。フランスが3位になれたのは、やはり今月に入って、ウズベキスタンに査証なしで行けるようになったから。

一方の南アフリカは2018年5月から2ランク落ちて第52位。査証なしで行ける国は102か国と変化がないものの、相対的な順位は下がった。

この調査で「査証が必要ない」というのは、事前に取る必要がないということらしい。つまり、必要だが入国時に取得できる国も含まれる。南アの場合、査証がまったく必要ないのは68か国。そのほとんどがアフリカや南アメリカの国。先進国はシンガポール、アイルランド、韓国くらいか。

世界的には52位と順位が高くない南アフリカも、アフリカでは第3位。1位はセイシェル(152か国)、2位はモーリシャス(146か国)。どちらも島国だ。アフリカ大陸では南アが1位ということになる。

パスポートのパワフル度上位国は以下の通り。

190か国-日本
189か国-シンガポール
188か国-ドイツ、韓国、フランス
187か国-デンマーク、フィンランド、イタリア、スウェーデン、スペイン
186か国-ノルウェー、イギリス、オーストリア、ルクセンブルク、オランダ、ポルトガル、アメリカ合衆国
185か国-ベルギー、スイス、アイルランド、カナダ
183か国-オーストラリア、ギリシャ、マルタ
182か国-ニュージーランド、チェコ共和国
181か国-アイスランド
180か国-ハンガリー、スロベニア、マレーシア

先進国によるドングリの背比べっぽい。やってきて、そのまま居ついてしまう可能性が低い国民ほど有利ということか。

アフリカの上位5か国を見ていると、

152か国-セイシェル
146か国-モーリシャス
102か国-南アフリカ
82か国-ボツワナ
76か国-ナミビア

やはりアフリカの中でも、裕福な国である。

日本人が事前に査証を取得しなければならない36か国

世界で最もパワフルなパスポートを持つ日本人が事前に査証を取得する必要があるのに、南アフリカ人は査証不必要または到着時に取得できる国が4か国ある。アンゴラ、ガーナ、ブラジル、そしてロシアだ。アンゴラとガーナは同じアフリカの国だからか。ブラジルとロシアはブリックス(BRICS)のおかげかもしれない。ブリックスは元々ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)の頭文字に複数を表す「s」をつけたものだったが、のち南アフリカも入れてもらい、「s」は「South Africa」の「S」となった。

因みに、査証必要の有無をリアルタイムで掲載しているのは、「Henry & Partners Passport Index」というウェブサイト。


【参考資料】
"Power of SA passport drops in global ranking", TimesLive(2018年10月10日)

【関連ウェブサイト】
Henry & Partners Passport Index

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2018/07/31

地元「ゆかり」を大切にする神戸の美術館

生まれて初めて神戸を訪れた。日本を出て30年近い私には、日本国内で行ったことがない土地がたくさんある。

職業柄、どこに行っても、つい美術館やギャラリーに目がいく。宿泊した六甲アイランドに美術館が3つあった。「神戸ゆかりの美術館」、「神戸ファッション美術館」、それに、「神戸市立小磯記念美術館」だ。

神戸ファッション美術館はあいにく休館だったが、神戸ゆかりの美術館と神戸市立小磯美術館には行ってみた。

神戸ゆかりの美術館の企画展示は「エトランゼの旅物語」。海外を訪れた神戸及びその近郊ゆかりのアーチストの作品展である。



第2次世界大戦以前の作品は質に大きなムラがあった。仕方ないかもしれない。ヨーロッパに行くこと自体が大変だったのだから。「行くことに意義がある」時代だったのだろう。

2018/07/29

戦う葬儀屋、銃で強盗を撃退 素人が武装することの是非

警備用監視カメラがいたるところに設置してあるおかげで、犯罪の犯行現場をあとからネットで見ることが多くなった。

たとえばこの映像。一か月前、南アフリカのショッピングモールの監視カメラが捉えたものだ。左奥に座った3人組に注目して欲しい。誰も気づかないうちに、堂々とハンドバッグを盗んでいる。



フムブラニ・オーブレー・ブヴンビ(Humbulani Aubrey Bvumbi)さんは葬儀会社のCEO。7月24日、ジョハネスバーグの高級住宅街ブライアンストンの自宅に愛車のレンジローバーで帰宅した。

「いつも通り門を入ったのですが、(自動的に閉まるはずの)門がなかなか閉まらないので不審に思って振り返ったら、見慣れない車が入って来るではありませんか。銃を持った男たちが車から降りてきたのを見て、命が危ない!と思いました。」

しかし、そのまま犯罪の犠牲者になるブヴンビさんではなかった。

「幸いなことに、銃を取り出してなんとか対応することができました。車のドアを開けようとした一人に向かって、即座に発砲したのです。犯人たちは危険を感じて走り逃げましたが、本当に頭にきましたよ。」

バックする黒のアルファロメオに向かって、ブヴンビさんは銃弾を撃ち続けた。

2018/07/06

限りなく完璧に近い人々(5)理想の体現に涙ぐましい努力を欠かさないスウェーデン人

世のため人のため、こうありたい、こうあるべきだ、と思っても、自分の生活に影響があるとなると、なかなか賛成・実行するのは難しい。汚水処理場や火葬場が必要なことはわかっていても、自宅の傍に出来るのは嫌だし、社会福祉の充実を願いながらも、増税には反対する。差別がいけないことはわかっていても、自分の息子や娘が身体障碍者や外国人(特に白人以外)と結婚したいと言い出したら二の足を踏む。国家レベルでも同じこと。他国の人権問題よりも自国の貿易の方が大切だろうし、市場開放や難民受け入れに難色を示す。

大義名分や理想と現実は違うのだ。どこの国でも、どの国の国民でも似たり寄ったりだろう。

ところが、スウェーデンは毛色が違う。本音はどうであれ、「公平」「正義」「民主主義」という理想や建前を重視し、理想に沿った政策を国家が実行してしまうのだから。

外務省

スウェーデンは過去40年にわたり、ヨーロッパのどの国よりも多く移民を受け入れてきた。住民の15%近くが外国生まれという。ヨーロッパで移民受け入れ第2位のデンマークですら、外国生まれの住民は6%強だから、スウェーデンの移民受け入れは文字通り桁違い。親の代まで考慮にいれると、外国生まれがなんと全体の30%にものぼる。

2018/07/03

弟がネズミに喰われた! 南ア公共医療の悲惨な現実、再び

2018年5月18日、クワズールーナタール州の田舎に住むボノクフレ・カリ( Bonokuhle Khali)さんは自宅から35キロ離れたンコンジェニ病院(Nkonjeni District Hospital)を訪れた。その1週間前、車にぶつかったときの痛みが出てきたためだ。そのまま入院。兄のジェローム・カリ(Jerome Khali)さんが家族と共に見舞いに行った際は元気だった。ところが数日後、病院からジェロームさんに電話。ボノクフレさんが亡くなったという。38歳だった。

「弟に会いたいというと、ネズミのフンが入った透明の袋を渡された。弟がネズミに食べられたことをそうやって私に知らせたのだ」と怒りを隠せないジェロームさん。「とても清潔であるはずの病院で、なぜこんなことが起こりえたのか理解できない。」

ジェローム・カリさん

ボノクフレさんが5月22日に亡くなった後、病院の死体安置所に移すよう指示を出す医師がだれもいなかったために、遺体は廊下に置きっぱなしにされた。ネズミが鼻や唇をかじり始める。病室の入院患者からほんの数メートルのところだ。ネズミたちがチューチュー鳴きながら、遺体をカリカリカリ。。。目と鼻の先に横たわる入院患者たちは生きた心地がしなかったことだろう。

2018/06/14

限りなく完璧に近い人々(4)耐え難きを耐え、忍び難きを忍ぶフィンランド人

欧米人が持つフィンランド人のイメージは「超寡黙」。『限りなく完璧に近い人々』(The Almost Nearly Perfect People)では、こんな実話が紹介されている。

著者マイケル・ブース(Michael Booth)の友人(フィンランド人)が吹雪の中、義兄と車に乗っていたところ、とんでもない田舎で車が故障してしまう。30分後、やっと車が一台通りかかった。運転手は車を止め、故障した車のボンネットの下をチェックし、親切も修理までしてくれた。その間、交わされた言葉ゼロ。通りかかりの人が立ち去った後、著者の友人は義弟に言った。「いや~、ラッキーだったね~。一体誰だったんだろう?」 義弟は平然と、「ああ、あれはユッカだよ。僕の同級生だった。」

私の経験では、フィンランド人が「超寡黙」とは感じたことがない。むしろ、「口を聞かないのは言うことがないから」とか「口をきかないのはバカだから」とかいう理由で、ひたすら自己主張し喋りまくるアメリカ人より、余計なことを言わないフィンランド人の方が楽。日本人と似ているのかもしれない。

2018/06/10

本『The President's Keepers』赤裸々すぎるズマ前大統領の汚職の実態

在職8年で一国をここまで滅茶滅茶にしたジェイコブ・ズマ(Jacob Zuma)大統領の手腕には恐れ入る。

「大統領職ほど儲かる仕事はない」とばかりに、私利私欲第一。国や国民のことはまったく眼中にない。

大統領時代のジェイコブ・ズマ

正規の学校教育を一年も受けていないのは、幼い頃の家庭環境や政治経済環境が原因だとしても、教育を受けるチャンスはその後いくらでもあった。服役中に学位を取った解放運動同志が大勢いる中、ズマは教育に興味がない様子。世界が注目した1999年の大統領就任演説では、自分の原稿がまともに読めなかった。英語の読み書きが苦手にしても、一世一代の晴れ舞台である。それなのに、前もって練習した気配もない。その後も英語の演説原稿を読むのが苦手。大きな数字となるとお手上げである。

もちろん自分で書いた演説ではない。しかし、原稿が読めないのは練習しなかったからだけではない。何が書いてあるか理解していないことが大きな原因だろう。大統領として、国を発展させ、国民の生活向上を図ることに興味がないのである。

2018/05/30

限りなく完璧に近い人々(3)根っからのアリさん型国民、ノルウェー人

2003年、皆既日食を生中継するというプロジェクトで南極に行った。「南極では南極に関する本を読みたい!」とスーツケースに入れたのが、ローランド・ハントフォード(Roland Huntford)著『The Last Place on Earth: Scott and Amundsen's Race to the South Pole』(地上最後の土地 スコットとアムンゼンの南極点到達レース)。


 イギリスのスコット隊とノルウェーのアムンゼン隊の競争を同時進行形で比較分析する、600ページ近い大著である。著者のハントフォードはシャクルトンやナンセンの伝記も書いている南極通。しっかりしたリサーチもさることながら、文章がめちゃうまいため、優れたサスペンス小説のように読ませる。なにしろ南極にはこの本一冊しか持っていかなかったので、ブリザードでテントに閉じ込められ他にすることがなくても、「早く先に進みたい!」とハヤル心を抑えながら、毎日少しずつ読んだ。

大変な思いをして南極点に到着したスコット隊5人の目に映ったのはノルウェーの国旗。アムンゼン隊は5週間も前に、南極点に到達していたのだ。飢えと疲労と寒さから、南極で壮絶な死を遂げたスコットは、即座に国民的英雄となる。

しかし、ハントフォードによると、計画段階で勝負は既についていたという。現地の事情をあまり考慮にいれず、騎士道的な精神論で熱く突っ走ったスコットと違い、アムンゼンは事前の準備を怠らず、緻密な計画を立て、適切な装備と服装を整え、犬の扱い方を理解し、スキーを効果的に使った。そのお蔭で、スコット隊の苦労とは対照的に、アムンゼン隊の旅はスムーズに進んだ。アムンゼンは南極点到達物語を本に書いているが、あまりに淡々として、読み物としては全然面白くないらしい。(自身も冒険家で南極体験があるラナルフ・ファインズなどはハントフォードのスコット分析を批判し、スコットを擁護している。)

2018/05/28

サム・ンジマ、亡くなる ソウェト蜂起の歴史的瞬間を捉えた写真家

報道写真家にとって、運や偶然が果たす役割は大きい。たまたま事件の現場にいたとか、たまたま立ち位置がよかったとかのおかげで、歴史的瞬間をものにし、一躍有名になる例も多い。もちろん、写真家としての腕や、どこでなにが起こっているか嗅ぎつける情報収集能力や、遭遇した瞬間を逃さない判断力も必要だが、その瞬間に数秒遅れたり、隣の道にいたりしたのでは、せっかくの腕が生かせない。

知り合いの写真家は20年以上前、世界的な報道写真賞を受賞した。1994年、南アフリカの白人右翼3人が殺されたときの写真だ。命乞いをする姿がテレビカメラにも収められているし、スチールの写真家も複数現場にいてシャッターを切っていた。「でも、あいつの立ち位置がたまたま一番よかったんだ」とその場にいた別の写真家。

この写真がWorld Press Photo Spot News部門3位(1995年)になった


同じく南アの写真家ジョディ・ビーバー(Jodi Bieber )は『タイム』の表紙になったアフガニスタン人少女の写真で世界的に有名になった。その後も主に自分のプロジェクトに専念し、精力的に活動している。


撮った写真が世界的に有名になったり、大きな賞を受賞することがその後の成功に即つながるわけではないけれど、少なくともこれまで閉ざされていた色々なドアを開けてくれることは確かだろう。

ところが、撮った写真が世界的に有名になったばかりに、写真家としての活動をやめざるを得なかった不運な人もいる。

サム・ンジマ(Sam Nzima)がそのよい例。1976年6月16日、警察に撃たれたヘクター・ピーターソン(Hector Pieterson)を腕に抱えて走るムブイサ・マクブ(Mbuyisa Makhubu)と、並走するヘクターのお姉さんアントワネットを撮った写真が代表作。

South African History Archive

サム・ンジマは1934年8月8日、現ムプマランガ州で生まれる。父親は農場労働者。10代で写真に目覚め、コダックカメラを購入して、夏休みにクルーガー国立公園を訪れる観光客の写真を撮って小銭を稼ぎ始めた。

2018/04/12

限りなく完璧に近い人々(2)先のことを考えないハチャメチャなバイキングの子孫、アイスランド人

NHKスペシャル『人体特許』(たしか文部科学大臣賞かなんか受賞したような・・・)の取材で、南大西洋の孤島「トリスタン・ダ・クーニャ」(Tristan Da Cunha)に行ったことがある。ディレクターとカメラマンは絶海の孤島での撮影後、アイスランドに向かった。遺伝子研究を行う会社「デコード」(deCODE)を取材するためだ。

アイスランドは人口が少ないため、遺伝子の研究が行いやすい。そこで、「デコード」社は政府の許可を得て、国民の遺伝子を使って研究を行い、利益の一部を国民に還元しているという話だった。一企業が国民の遺伝子情報をすべて把握するなんて、倫理問題や政治問題になりそうだけど、なんと先進的、理知的、現実的なことか。北欧のイメージにぴったりだった。


日経ビジネスONLINE

ところが、今回、『限りなく完璧に近い人々』(The Almost Nearly Perfect People)を読んで驚いた。将来のことを全然考えない、無茶苦茶なギャンブラーのような国民性なのだから。



2003年から2008年の間、アイスランドの3大銀行は1兆4000万億ドルもの資金を借り入れた。これはアイスランドのGDPの10倍に当たる。

中央銀行の外貨準備高が250億ドルの国の銀行にこんな大金を貸す方も貸す方だが、当時のアイスランド政府は心配するどころか、起業家が銀行から融資を受けることを推奨。銀行から多額の融資を受けた起業家たちは、そのあぶく銭を湯水のように使いまくったのだった。

たとえば、デンマークの大デパートやイギリスのサッカーチーム「ウェストハム・ユナイテッド」(West Ham United)を買収。デパートなんて、今どきとても賢い買い物とは思えないし、サッカーチームはまずビジネスで大成功し、使い切れないほどの余剰金が生まれてから購入を考えるべきだろう。

そして、普通の国民まで、「ナイジェリアの詐欺メールでしか使われないような、途方もない財務計画を諸手(もろて)を広げて歓迎した」。日本円で融資を受けたり、スイスフランで住宅ローンを立てたりしたのである。「腰まで魚の内臓につかっていたアイスランド人が、一瞬にして、購入するポルシェ・カイエンのオプションを比較するようになった」という。

誕生日パーティーで一曲歌ってもらうために、わざわざエルトン・ジョンを呼び寄せたり、プライベート・ジェット機をタクシーのように使ったり、シングルモルトウィスキー1瓶に5000ポンド(今の為替レートで86万円)払うのを何とも思わなかったり・・・。全く見返りのないものに、銀行から借りたお金を使い果たしてしまった。「銀行から借りたお金は利子をつけて返さなければならない」という基本の基本を理解していないとしか思えない。

2018/04/03

ウィニー・マディキゼラ=マンデラ、亡くなる 解放運動の闘士、ネルソン・マンデラの元夫人

"She is brave but stupid."

勇敢だけど愚かだ」というのは、25年位前、ズールー語の先生ノムサが当時ネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)夫人だったウィニー・マンデラ(Winnie Mandela)を形容した言葉。

ノムサはウィニーと同じコサ族。年も同じくらい。「ウェンディ」という英語名もあるが、「奴隷名」と呼んで嫌っていた。「アフリカ人の名前が発音できない白人のために、これまで嫌々英語名を使ってきたけれど、これからは私たちの時代!」という気概が感じられた。

ノムサは知的で聡明で、しっかりと自分の意見を持った人だった。ズールー語を教えるのが本職だったのだろうか。それとも、それはパートで、昼間は別の仕事についていたのだろうか。

簡潔で淡々としたノムサの言葉は、客観的なウィニー評のように聞こえた。

昨日(2018年4月2日)、ウィニー・マディキゼラ=マンデラ(Winnie Madikizela-Mandela)が亡くなった。享年81歳。

普通、死人の悪口は言わないものだ。葬式で故人の人柄や業績を称えても、欠点をあげつらう弔問客はいない。

しかし、歴史的人物の死亡記事・報道の場合、業績を重視しつつも、欠点や失敗や汚点にも歴史的評価として触れるのが一般的である。大抵9割x1割くらいの比率だろうか。ところが昨日、今日の報道を見ると、ウィニーの場合、特に第3者として客観的に論じやすい外国メディアで、それが6割x4割くらいになっている。

2018/04/01

今週末はイースターウィークエンド ウサギ、タマゴ、ホットクロスバン・・・

今週末はイースターウィークエンド。イースターは「春分の日の後の、最初の満月の次の日曜日」。それを挟んだ金曜日と月曜日が南アフリカでは祝日なので、毎年イースターは4連休になる。夏休みのど真ん中にあたるクリスマスに次ぎ、家族で祝うキリスト教関係行事ナンバーツーである。

クリスマス同様、普通の家庭では宗教色は薄く、もっぱら子供を中心とした家庭行事になっている。クリスマスではクリスマスツリーを飾り、サンタクロース(南アではファーザー・クリスマス)が持って来たことになっているクリスマスプレゼントを交換するが、イースターではウサギ(イースターバニー)がタマゴ(イースターエッグ)を持って来る。色とりどりに彩色したタマゴを大人が事前に庭や家の中に隠し、子供たちが探すのが定番。また、イースター直前、店にはウサギやタマゴをかたどったチョコレートが並ぶ。

ゴディバのイースターバニー&イースターエッグセット

連休を利用して旅行に出かける家庭も多い。子供がいない勤め人にとっては、4連休というだけでありがたい。

日本語では「復活祭」という。金曜日にキリストが十字架にかけられ、3日後の日曜日に復活したことを祝うお祭りである。

2018/03/29

限りなく完璧に近い人々(1)世界で一番幸せなデンマーク人

The Almost Nearly Perfect People(限りなく完璧に近い人々)という本を読んでいる。副題はThe Truth about the Nordic Miracle(北欧の奇跡の真実)。著者はデンマーク在住のイギリス人作家・ジャーナリスト、マイケル・ブース(Michael Booth)。料理と旅を専門とするライターだ。『英国一家、日本を食べる』(亜紀書房。原題 Sushi and Beyond: What the Japanese Know About Cooking )という著作もある。


見返しの宣伝文にはこうある。

世界中が北欧諸国の成功の秘密を知りたがっている。世界で一番税金多く払っているのに、何故デンマーク人は世界で一番幸せなのか? フィンランドの教育制度が世界で一番優れているのなら、何故フィンランド人は「スウェーデン人の男は皆ゲイだ」と未だに信じているのか? アイスランド人は本当に野放図なのか? ノルウェー人はあり余る原油収入をどう使っているのか? そして、何故、以上の全員がスェーデン人を嫌っているのか?

マイケル・ブーズ(amazon.co.uk
もうお気づきとは思うが、ガチガチの真面目な本ではない。しかし、しっかりしたリサーチと取材に基づいている。ニヤニヤ、時には大笑いしながら読み進めると、北欧5か国の現実と、そこに暮らす人々の姿が等身大で迫ってくる。

最初に取り上げられているのは、著者が住むデンマーク。著者の奥さんはデンマーク人。5章150頁に及ぶ内容なので、最も印象に残ったことをご紹介する。

レスター大学(University of Leicester)心理学部が「生活満足指標」(Satisfaction with Life Index)なるものを発表した。それによると、世界中で最も幸せなのはデンマーク人という。著者にしてみれば解せない。「暗くて、ジメジメして、どんよりして、平坦で、小さな国土」に「ストイックで良識のある人々」が住む「世界一税率が高い」国が、世界で一番幸せな国?

ブースはデンマークの幸せの理由を探るリサーチを開始する。

2018/03/25

世界で最も幸せな国民はフィンランド人 2018年世界幸福度レポート

国連機関のSDSN(Sustainable Development Solutions Network)が、「2018年世界幸福度レポート」(World Happiness Report 2018)を発表した。編者はコロンビア大学(Columbia University)、ブリティッシュ・コロンビア大学(University of British Columbia)、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(London School of Economics and Political Science)のトップ経済学者。2015年から2017年にかけて、ギャラップ(Gallup)社が世界156か国で行ったアンケート結果を分析したものだ。

2018年世界幸福度レポートの表紙

上位10か国は以下の通り。

1. フィンランド
2. ノルウェー
3. デンマーク
4. アイスランド
5. スイス
6. オランダ
7. カナダ
8. ニュージーランド
9. スウェーデン
10. オーストラリア

上位10か国の顔ぶれは去年と一緒。大きな違いは、去年5位だったフィンランドが1位になったこと。(去年の1位はノルウェー。)

この報告書によると、国民の幸福度を左右する要因は6つあるという。国民一人当たりのGDP、社会福祉、平均寿命、自分の人生を自分で決めることができる自由、 寛容性、汚職のレベルである。

世界一の経済大国アメリカ合衆国は18位(2016年は13位、2017年は14位)。国が裕福だからといって、国民が幸福とは限らない。

2018/03/22

『ブラックパンサー』の大ヒットで、架空の王国「ワカンダ」のホテルサーチが急増

世界中で大ヒットとなったマーベルスタジオ(Marvel Studios)初の黒人スーパーヒーロー映画『ブラックパンサー』(Black Panther)。


主人公ティ・チャラ(T'Challa)はアフリカの小国ワカンダ(Wakanda)出身。高度な科学技術を誇る超文明国だが、表向きは発展途上国として、欧米列強の植民地化を逃れ、何百年も平和と繁栄を保って来た。

(ヨーロッパ諸国が19世紀末のベルリン会議で、現地の意向をまったく無視してアフリカを分割した歴史的経緯を映画製作者は知らないのか、それともストーリー上都合が悪いから忘れることにしたのか。ワカンダが目立たないように努力したからといって、避けられた運命ではないのに。「ファンタジーだから歴史は関係ない」と割り切ることもできるけど、世界に関心がない超大国アメリカの映画だから、ここまでアフリカの歴史を無視できるのだろう。)

ティ・チャラは父王の死後、新国王に即位しながらも、スーパーヒーロー「ブラックパンサー」としても活躍。(動物のパンサーが生息するのはアメリカ大陸。アフリカにいるのはレパードだけど、アメリカの漫画が原作だからパンサーなのだろう。)

2018/03/18

ヒロイン役は南ア人ソプラノ! METライブビューイング

ガエターノ・ドニゼッティ(Gaetano Donizetti)のコメディ・オペラ『愛の妙薬』(L'elisir d'amore)が最高に楽しかった。主な歌手全員、歌がうまいだけでなく、かなりの役者である上に、息がぴったり合っている。人を笑わせるのはむずかしいと思うのだが、抜群の演技とタイミングに喝采した。


主役の単純で間抜けな貧農、ネモリーノ(Nemorino)を演じるのは、アメリカ人テノールのマシュー・ポレンザーニ(Matthew Polenzani)。



いい人なんだけど、一生の伴侶にするにはお人好しすぎて多少の不安がある(と私は思う)ネモリーノは、美人で聡明で、根は優しいがちょっと高慢な富農の娘アディーナ(Adina)に一途な恋をしている。動画はネモリーノが歌う有名なアリア『人知れぬ涙』(Una furtiva lagrima)。


アディーナ役は南ア人ソプラノのプリティ・イェンデ(Pretty Yende)。1985年3月6日、南アフリカの田舎町に生まれた。生まれて初めてオペラに触れたのは16歳の時。ブリティッシュエアウェイズ(British Airways)のコマーシャルで、レオ・ドリーブ(Léo Delibes)のアリアを耳にし、オペラの虜になった。



南アの音楽学校を優等で卒業後、ミラノのスカラ座付属学校で学ぶ。ヨーロッパで数々の賞を勝ち取り、2012年スカラ座デビュー、2013年ニューヨークのメトロポリタンオペラデビュー。もちろん才能と努力の賜物だろうが、現代のシンデレラ物語である。

2018/03/14

日本文化祭 プレトリアで開催

日本大使館主催の「日本文化祭」(Japan Cultural Expo)が2018年3月1日から3日、プレトリアのショッピングモール「ブルックリンモール」(Brooklyn Mall)で開催された。


日本・南ア外交関係樹立100周年記念行事の一環とのこと。

・・・えっ? 日本・南ア外交関係樹立100周年記念ということで、2010年に大々的に色々なイベントが行われたはず・・・。個人的にもその一環で、2010年プレトリアの国立劇場で絵画の個展を大使館主催で開催したし、2011年には100周年記念の目玉である「日本研究センター」を、プログラムディレクターとしてプレトリア大学ビジネススクール内に立ち上げた。

その100年前の1910年は日本名誉領事が任命された年。今年の100年前にあたる1918年は、プレトリアに日本領事館が開設された年。そういうわけで、またもや「100周年記念」の年となったわけだ。

2018/02/27

世界で3人しか話せない超マイナー言語「バデシ語」 パキスタン

BBCニュースでバデシ(Badeshi)語の存在を知った。

世界中でバデシ語を話せるのは、パキスタン北部山岳地帯のビシグラム(Bishigram)谷に住む3人の老人だけ。この3人も、日常的にバデシ語を話すことがあまりないため、単語をしょっちゅう忘れるという。

バデシ語を話す最後の3人

バデシ語はインド・イラン語派に属する。2000年には約2800人の話し手がいた。

ビシグラム村でも、1世代前は村中がバデシ語を話していた。といっても、10家族くらいしかいなかったらしい。ビシグラム谷は過疎の村。嫁不足のためトルワル(Torwali)人を妻として迎え入れたことから、バデシ語が話されなくなったという。子供たちは母親の言語トルワル語を覚えて育つ。また、この辺りでは、トルワル語を話す人の方がバデシ語を話す人よりずっと多い。

2018/02/15

ベッカム、ゾンビ、スタートレック・・・。楽しい大学の科目あれこれ

アメリカのテレビ番組『ゲーム・オブ・スローンズ』(Game of Thrones)が米バージニア大学(University of Virginia)で英文学の科目になった。エミー賞、ゴールデングローブ賞など受賞している超人気ファンタジードラマだ。

授業を行うのはリサ・ウールフォーク(Lisa Woolfork)準教授。実績のある学者とのこと。『ゲーム・オブ・スローンズ』は「文学的に見て、非常に多様で含蓄がある文章。何重もの層があり、登場人物が豊富で、とても知的」とベタ褒め。

ディスカッションが主の授業は4週間にわたり、学生たちは最後に『ゲーム・オブ・スローンズ』の新しい章をグループ別に書くことになっている。現在24名の学生が受講中。

4年生のマドリン・マッコーリフ(Madlyn McAuliffe)さん曰く、「昔は本が話題を提供したが、今その役割を果たすのはテレビと映画」「文学と同じ原則をテレビや映画に適用するのは大切だと思う」。

これ以外にどんな「オモシロすぎて、実在するとはとても思えない大学の科目」があるのだろう、と英『デイリー・テレグラフ』(The Daily Telegraph)紙が探し出してきたのが以下のコース。

* * * * * * * 

デイビッド・ベッカム研究(David Beckham studies) 英スタッフォードシャー大学(Staffordshire University)

この大学には「メディア・スポーツ・文化」という学位があるそうで、その授業の一環。ベッカムの写真をホレボレと観賞するわけではなく、人々がサッカー選手に夢中になる現象を社会学的に研究するもの。コースを創設したエリス・キャシュモア(Ellis Cashmore)教授曰く、「今日ベッカムが大きな注目を浴びているのは事実。ベッカムは数多くの夢想・幻想の対象となっている」。

2009年ケープタウンにて。記者会見で一語一語ゆっくり言葉を選んで話す、誠実な態度が印象的でした。

2018/02/12

ジョーバーグにマリファナ喫茶誕生「420カフェ」

1971年のことだ。米カリフォルニア州の高校生5人が某日午後4時20分、サンラファエル高校のルイ・パスツール銅像前に集合した。マリファナ生産者が残したという地図を手がかりに、捨てられたと噂される大量の大麻を探そうというのだ。5人はこの計画を「420ルイ」(420 Louis)と名づけた。何度か探索を行ううちに、「420ルイ」は「420」に短縮された。

探し物は結局見つからなかったが、「420」(フォーツウェンティ)は「マリファナ」の隠語として若者の間に定着する。

そして、やはり「420」である4月20日は、世界中の反体制文化にとって、いつしか特別な日となった。集まってマリファナを謳歌し、一緒に喫って楽しむ日になったのだ。時刻はもちろん4時20分。集会の多くはマリファナ合法化を求める政治色を帯びるようになる。

ハウスメートやルームメートを求める広告で「420フレンドリー」とあれば、マリファナを喫っても構わないということ。また、「マリファナを持っている」または「喫いたい」と伝えたいときに「420」と言ったりする。

マリファナ喫茶「420カフェ」の外観(Times Live

ジョハネスバーグにマリファナ喫茶が誕生した。その名も「420カフェ」(420 Café)。

2018/02/01

世界で最も住みやすい都市ランキング 日本が10位以内に3都市も

モノクル」(Monocle)は国際ニュースからビジネス、文化、ライフスタイルまでを扱う雑誌、24時間ラジオ局、ウェブサイト。CBCニュースのレポーター、ハリー・フォーステル(Harry Forestell)に言わせると、フォーリン・アフェア(Foreign Affairs)誌とヴァニティ・フェア(Vanity Fair)誌を足して2で割ったようなもの。国際人のための情報提供メディアである。

このほど、『モノクル』誌の第8回「世界で最も住みやすい都市ランキング」(Most Liveable Cities Index)が発表された。正式名は「生活の質調査2014」(Quality of Survey 2014)。

Quality of Life Survey 2014 (Monocle)

住みやすい都市ランキングはいくつかあるが、『モノクル』誌が重視するのは、安全性・犯罪の少なさ、世界とのつながり易さ、気候・日光、建築の質、公共の交通機関、許容度、自然環境、都市デザイン、ビジネス環境、積極的な政策決定、医療など。

公表された25都市の11位から25位を見てみよう。

25位 ブリスベン(オーストラリア) 新規
24位 オスロ(ノルウェー) 新規
23位 ポートランド(アメリカ) 昨年と同じ
22位 リズボン(ポルトガル) 新規
21位 バルセロナ(スペイン) 昨年と同じ
20位 ハンブルグ(ドイツ) 昨年16位
19位 アムステルダム(オランダ) 昨年22位
18位 パリ(フランス) 昨年14位
17位 マドリッド(スペイン) 昨年18位
16位 シンガポール(シンガポール) 昨年16位
15位 バンクーバー(カナダ) 昨年19位
14位 ベルリン(ドイツ) 昨年20位
13位 香港(中国) 昨年11位
12位 オークランド(ニュージーランド) 昨年10位
11位 シドニー(オーストラリア) 昨年9位

そして、ベストテンは・・・? 『モノクル』誌のコメント付きで紹介する。

2018/01/30

ケープタウンの水不足 4月12日に蛇口から水が流れなくなる!

ケープタウン在住の友人からこんな写真が送られてきた。


 「私の節水努力よ。洗濯機の水を水洗トイレに再利用!」との説明付き。

南アフリカは全国的に水不足。特に、冬が雨期のケープタウンでは、去年も一昨年も冬に殆ど雨が降っていない。ノムヴラ・モコニャネ(Nomvula Mokokyane)水資源大臣によると、「400年振りの大旱魃」。(400年も統計を取っているはずはないと思うけど。。。)

2018/01/25

トランプ大統領誕生までを振り返る(5)アメリカ1番 2番は我が国! トランプへの自国紹介ビデオが世界中に拡散。中東、アフリカ、火星からも

2016年8月から2017年2月までに別ブログに書いたトランプ関連記事転載の最終回は、『アメリカ1番 2番は我が国! トランプへの自国紹介ビデオが世界中に拡散。中東、アフリカ、火星からも』(2017年2月13日)。

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先週ご報告した「アメリカ1番 2番は我が国!」自国紹介ジョークビデオ。オランダ版が1月23日にユーチューブにアップされ大ヒットした後、2月5日の時点で、ドイツデンマークスイスベルギーリトアニアポルトガルオーストリア、オランダ北部のフリースラント州、更にはカザフスタンインドメキシコ版がユーチューブで公開されていた。(赤茶色部分をクリックすると、別ウィンドーでユーチューブビデオが開きます。)

それから一週間。勢いに乗ってもっと多くのバージョンが発表されただろうか、それともあっという間に下火になってしまっただろうか。

調べたところ・・・ものすごい数のバージョンができている! 複数のバージョンがある国もある。ドイツの呼びかけに応じたテレビ局制作のものだけでなく、それ以外の有志が作ったものも多いようだ。ほとんどがオランダのフォーマットを継承しているが、独自の構成のものもある。質も様々。

ヨーロッパ大陸からは新たに、アイスランドアイルランド(「51番目の州になりたい」)、アルバニアイギリス(「第3次世界大戦を一緒に戦うのを楽しみにしている」)、イタリアウクライナクロアチア(「アメリカ第1、ドイツ第2、クロアチア第3」)、コソボスウェーデンスペインスロバキアスロベニアセルビア(画質が悪すぎ。ナレーションではなく、セルビア民謡(?)っぽい歌が流れ、なんとなくシュール)、チェコ(「51番目の州になりたい」)、ノルウェー(「スウェーデンを最下位にしてくれ」)、フィンランドフランスブルガリア(「アメリカ第1、ロシア第2」「上位10位に入りたい」)、ベラルーシボスニア・ヘルツェゴヴィナポーランド(「アメリカ第1。ポーランドは超第1!」)、マケドニアモルドバラトビアルクセンブルクルーマニア(「少なくとも上位100位には入れてくれ」)など20か国以上。もう存在しない東ドイツというのもあった。地理的に中途半端な位置にあるトルコもここで紹介しておく。

「ここが我が国」とラトビア。トランプが核兵器発射ボタンを押すことを懸念(?)して、他国を地図上で示す国がいくつも。

2018/01/21

妖術? 亡くなってから10日後にお棺の中で出産

南アフリカ共和国東ケープ州のムビザナ(Mbizana)市。ネルソン・マンデラの盟友オリヴァー・タンボ(Oliver Tambo)やマンデラの2番目の夫人ウィニー・マンデラ(Winnie Mandela)を輩出した、人口28万の田舎町である。といっても、ほとんどの南ア人は耳にしたこともないだろう。そのムビザナ市近くのムタイシ(Mthayisi)村が数日前、世界の注目を浴びた。

死後10日経った女性が出産したというのである。

ムビザナ市でのオリヴァー・タンボ銅像除幕式

ノムヴェリソ・ノマソント・ムドイ(Nomveliso Nomasonto Mdoyi)さんは33歳。5児の母。妊娠9か月だった今年初め、いきなり息苦しくなりそのまま亡くなった。自宅でのことだ。

1月13日土曜日に、葬式が執り行われることになった。遺体は葬儀屋に保管されていた。ところが葬儀の前日、ノムヴェリソさんが出産したというのだ。(正確には、葬儀屋職員がお棺を開けたら、ノムヴェリソさんの足の間に赤ちゃんの死体があったらしい。)

葬儀屋のオーナー、フンディレ・マカラナ(Fundile Makalana)さん曰く、「びっくりしたのと怖かったことで、赤ん坊の性別を確かめることもしませんでした。葬儀屋を20年以上していますが、死んだ女性が出産したなんて聞いたこともありません」。

2018/01/18

トランプ大統領誕生までを振り返る(4)アメリカ1番 2番は我が国! オランダのジョークビデオが大ヒット 各国で疑似ビデオ続々作成


2016年8月から2017年2月までに別ブログに書いたトランプ関連記事転載の第4弾は、『アメリカ1番 2番は我が国! オランダのジョークビデオが大ヒット 各国で疑似ビデオ続々作成』(2017年2月6日)。

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TV番組の司会者が言う。「第45代アメリカ合衆国大統領の就任式を世界中が見守る中、トランプは世界に対し明快なメッセージを送りました。”お前たちを散々な目に遭わせてやる”。」(視聴者の笑い声)「いや、使った言葉は多少違いましたが。」

画面に映し出されたのは、就任式でのトランプ。



From this day forward, it's going to be only America First. America First.

つまり、「(自分が大統領になった)今日からは、アメリカ第一だ」。

番組司会者が言葉を続ける。「仲良くやった方が無難なので、この小さい我が国をトランプに紹介することにしました。ある意味で、それが一番トランプにアピールできると思ったからです。」

目が覚めたらまずテレビ、寝る前にもテレビ・・・という、テレビ大好き人間のトランプ大統領に訴えるには、ビデオという視覚メディアを使うのが最善というわけだ。

(余談。先週、米MSNBCの早朝報道番組『Morning Joe』に出演中の下院議員が、いきなりカメラに向かって話しかけた。「大統領、あなたがこの番組を今見ていることを私は知っています。話があるから、電話ください」。番組の後、連絡があったとのことだ。大統領府でアポを取ろうとするより、テレビで直接呼びかけた方が早いなんて・・・。)

そして、オランダの紹介ビデオが始まる。

2018/01/15

本『クウェズィ』(Khwezi) ズマをレイプ容疑で訴えた女性の悲しい生涯

2005年12月6日、31歳の女性が与党ANC(アフリカ民族会議)の大物ジェイコブ・ズマ(Jacob Zuma)をレイプ容疑で訴えた。ジョハネスバーグのズマ邸に泊まった夜、ズマが寝室に入って来てレイプしたというもの。亡命生活時代、ズマと亡き父が親友だったことから、幼い頃からズマを父のように慕っていたという。

ズマは「合意の上の性行為」と主張。「普段ズボンを履いている女性がその日はスカートだった。誘惑した証拠だ」「カンガ(一枚の布)をまとって寝ていた。誘惑の証拠だ」「ズールー族の文化では、その気になっている女性を放っておくのは女性を侮辱したとみなされる」と支離滅裂な論理を展開し、「それはズールーの文化ではなく、ズマの文化だろう」と揶揄された。また、女性がHIV陽性であることを知りながら、コンドームをつけず性行為を行い、「事後エイズ予防にシャワーを浴びた」と法廷で証言したことで、国内外で笑いものになった。これ以後、政治風刺漫画家ザピロ(Zapiro)の描くズマは、頭からシャワーヘッドが突き出た姿となる。

Daily Maverick

プライバシー保護のため、この女性の顔写真も名前も公開されなかった。裁判では「クウェズィ」(Khwezi)という偽名が使われた。ズマは当時63歳。中年を通り越している上に、ブ男で肥満で、お世辞にも魅力的とはいえない。それにズマは女癖が悪いことで有名。複数の妻を持ち、妻以外の女性たちにも子供を産ませている。

年長者を敬う文化、男尊女卑の傾向が強い文化の中で育ったクウェズィが、父と慕い信頼し切っていた「マルメ」(おじさん)に襲われ、混乱し、ショックで凍りついてしまったことは容易に想像できる。また、エイズ問題活動家だったクウェズィがズマを誘惑し、HIV陽性でありながら、コンドームなしで性行為に及んだとは考えにくい。

そのため、クウェズィを信じ、応援する女性が多いのではないかと想像していた。

ところが、与党ANCの女性たちは狂信的にズマを信じた。クウェズィを嘘つきとハナから決めつけ、何十人もの黒人女性が裁判所の前で、「Burn the bitch!」(あのメス犬を焼き殺せ)などどヒステリックに叫ぶ姿は異様だった。