2011/05/27

「寿司キング」鉱山で大儲け 黒人優遇政策の効果的活用法?

高級クラブ「ZAR」のオーナー、ケニー・クネネ(Kenny Kunene)の名前が初めてマスコミを賑わしたのは、2010年10月末。ジョハネスバーグで行った40歳の誕生パーティーが物議を醸しだしたのである。

70万ランド(840万円)使ったパーティーの呼び物は「NYOTAIMORI」。そう、女体盛り。ビキニ姿の黒人モデルのお腹に、スシを乗せてゲストに振舞ったのだ。

女性団体、人権団体、メディアなどに叩かれても「良い宣伝」としか受け止めなかったようで、今年1月末にはケープタウンでゲスト4000人の大パーティーを開催。今度は白人モデルの裸体にスシを乗せて、更なるヒンシュクを買った。

詐欺容疑で10年間服役し、数年前までミーティングに行くのにヒッチハイクしていた貧乏人が、どうやって短期間に、ポルシェやランボルギーニなど複数のスポーツカーを所有する大金持ちになったのか。

その秘密はBEEにある。

BEEはBlack Economic Empowermentの頭文字。アパルトヘイト下で差別されていた人々に経済力をつけようという、黒人優遇政策。現在は拡大され、BBBEE(Broad-based Black Economic Empowerment)。「ビービービーイーイー」なんてあまりにも語呂が悪く、思いっきり冗談みたいなので、 一般には「ビーイーイー」と呼ばれている。

ノーベル平和賞受賞のデズモンド・ツツ大司教などは早くから、「コネのある一部のエリートを金持ちにするだけで、国民の大多数である貧しい人々には恩恵がない」と批判している。

クネネの「コネ」はエドワード・ズマ(Edward Zuma)。ジェイコブ・ズマ大統領の息子。エドワード・ズマは、かつて解放運動組織だった与党ANCの「退役兵」団体、MKMVA(Umkhonto weSizwe Military Veterans' Assocation)を率いる。

クネネのビジネスバートナーは、元銀行強盗のゲイトン・マッケンジー(Gayton McKenzie)。ふたりは鉱山会社CRG(Central Rand Gold)を設立。国から採掘権を得るためには地域の社会開発・雇用計画を作成し、地域住民の賛同を得なければならない。ふたりはソエトなどの住民と何度か会合を持ち、CRGの株、雇用、ビジネスの機会を約束した。

住民の全面的協力と強力なコネのおかげで、CRGは異例の早さで採掘権を獲得。2007年にジョハネバーグとロンドンの証券取引所に上場。10億ランド(120億円)以上の資金調達に成功した。

クネネとマッケンジーはふたり併せて月給約40万ランド(480万円)。更に、記録的な早さで採掘権を得た「ご褒美」として400万ランド(4800万円)のボーナスを手に入れる。

ところが、地域住民への恩恵はゼロ。地元で大儲けをしたのは、住民とCRGの間に立った「住民代表」数人だけ。例えば、元「住民代表」のひとり、テボホ・マショエン(Tebogo Mashoeng)は過去2年間にCRGから1300万ランド(1億5600万円)相当の仕事を請け負い、ジャガーの新車を買っている。

MKMVAにも大金が支払われたが、潤ったのは幹部のみらしい。支部では、年老いて死んでいくメンバーの葬式も出せないという。

手っ取り早く大儲けしたクネネとマッケンジー。鉱山経営には最初から興味がなかったようだ。この4月には10億ランド以上の「赤字」を計上し、従業員233人のうち212人の解雇を発表した。

クネネが「スシキング」として知られているお蔭で、CRGのアクドサと住民の落胆はメディアで取り上げられたが、この手の話は様々な規模と形で、全国で繰り広げられているに違いない。損をするのは、いつも声なき一般国民である。

「女体盛り」を楽しむクネネ

(参考資料:2011年5月22日付「Sunday Times」など)

0 件のコメント:

コメントを投稿