2017/03/04

フォードクーガ 約50台が炎上したのに、お粗末な対応

フォードクーガ」(Ford Kuga)を日本語でグーグルしてみた。「低燃費なのにパワフル!」「走破性能や疲労度の少ないシートなど、高い実用性」「俊敏な走りは大きな魅力」・・・。

いいことばかりだなあ。南アフリカでは売れない車なのに。なにしろ、2015年以来、南アフリカ、スワジランド、ボツワナの3か国で、約50台もが走行中にいきなり火を噴いてしまっているのだ。今では「フォードクーガ」という名前だけで新車、中古車とも買い手がつかない。

炎上するクーガ(BBC News

2015年9月のある日、ショーン・トンプソン(Sean Thompson)さんは愛車のクーガを車庫に入れた。その夜、トンプソンさんにトラッキング会社から電話がある。トンプソンさんの車のバッテリーが上がりかけているから様子を見た方が良いという。エンジンを切ったはずなのに・・・。怪訝に思って車庫に行くと、なんと!車が燃えていた。そして、ドアが開かない!

翌日、クーガをフォードに持って行く。フォードは「前回の定期整備を行ったのはうちじゃない」と責任を取ることを拒否。保険会社も「フォードの整備がいい加減」と支払いを拒否。トンプソンさんは修理に約30万円払うはめになる。

整備工曰く、「エンジンが切ってあるのに、電気系統がまだ動いている」。トンプソンさんは直ちにフォードにメールで連絡。「誰かが死ぬことになるかもしれない」から、「他のオーナーに警告しクーガの電気系統をチェックした方がよい」と勧める。フォードから返事はなかった。


ショーン・トンプソンさん(The Citizen

2015年12月、西ケープ州ウィルダネスで休暇を楽しんでいたレシャル・ジミー(Reshall Jimmy)さんの愛車が運転中にいきなり発火。ジミーさんは車内で焼け死んだ。33歳だった。ジミーさんの車は2014年製造のクーガ1.6リットル。

運転中にボンネットから突然、火! 急停車する。一刻も早く脱出しないと・・・。え! ドアが開かない!! 大パニックと恐怖の中、ジミーさんはさぞかし苦しみながら最期を迎えたことだろう。

私の言葉にフォードが耳を傾けていたら、ジミーさんが死ぬことはなかった」とトンプソンさん。

レシャル・ジミーさん(Times Live

その後、フォードクーガが高速道路や交差点で炎上する模様を通りがかかりの人が撮った映像が、ソーシャルメディアに次々とアップされた。「FORD Vehicles Burning」(燃えるフォード車)というフェイスブックページまで立ち上がり、13万3千人以上がフォローしている。

フェイスブックページ「FORD Vehicles Burning」から

しかし、フォードは「欠陥車という証拠がない」とか、「南部アフリカの暑い気候が原因」とかうそぶくだけ。クーガはもっと暑いサウジアラビアでも売られているのだが、サウジアラビアで発火したという話は聞かない。大体、「暑い気候が原因」というのなら、それに対応した車を製造すべきではないか。

また、たとえ「欠陥車という証拠がない」にしても、問題があったのは1台や2台ではない。人命に関わる問題だし、大事故につながる可能性もある。フォードの「誠意のなさ」が人々の心に焼き付いた。

アメリカでは、同様の発火リスクが疑われたモデルが、事故が起きる前にリコールされたという。「アフリカ」だから、「先進国」じゃないから、軽視されているのか

フォードがやっとリコールに踏み切ったのは、2017年1月16日。約50台ものクーガが走行中に突然発火し、消費者を守る政府機関「全国消費者委員会」(National Consumer Commission)から圧力がかかってのこと。その頃には、「フォードクーガ」を買う者はいなくなっていた。「危ない!」というので、クーガを売って別の車を買おうにも、買い手がつかない。リコールの対象になったのは、2012年から2014年にスペインで製造された1.6リットルのモデル、4556台。更に今週、2リットルモデルもリコールされた。

「ブレーキ・ブースター・バキューム・パイプ(brake booster vacuum pipe)がターボ・ヒート・シールド(turbo heat shield)に近すぎる」のが原因という。 パイプがターボ・ヒート・シールドに当たってオーバーヒートし、シリンダー・ヘッドにヒビが入り、そこからオイルが漏れ、火災になる。なんだあ、やっぱり製造過程で問題があったわけだ。

フォードは「ジミーさんのクーガの火災は車の後部で発生しているから、この問題とは無関係」と主張。ところが、ジミーさんの車が燃えているのに出くわした人が録画したビデオが浮上。


明らかに、ボンネット部分が燃えている。まさか、映像が現れるとは思っていなかったのか、フォードは大嘘をついていたわけである。

全国消費者委員会はフォードに対し、2月28日までに調査報告書を提出するよう命令。ところが、フォードによる調査はあまりにいい加減だった。「お粗末と呼ぶのも褒めすぎ。本当にきちんとした調査が行われたかどうか疑問」だと、委員会では独自の調査実施を決定。全国消費者法違反ということになれば、年間売り上げの10%の罰金もあり得る。

一方、ジミーさんの家族はフォードを訴える予定という。訴えてジミーさんが生き返るわけではないことはわかっている。だが、家族としてはそうでもしないと心が収まらないだろう。


【関連ウェブサイト】
BBC "South Africa Ford recalls Kugas over fires" (2017年1月16日)
The Citizen "Jimmy’s death could have been prevented – Ford Kuga owner"(2017年1月18日)
The Times "Ford faces roasting"(2017年3月2日)
Time Live "Ford under investigation for contravening National Consumer Act"(2017年3月2日)
Times Live "Ford takes big hit again as it recalls another Kuga model"(2017年3月3日)
フェイスブックページ「FORD Vehicles Burning
National Consumer Commission

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