「
生きているうちにこの日が来るとは思わなかった。」
ロバート・ムガベ大統領(93歳)の辞任を聞いて、多くのジンバブエ人がこう語った。なにしろ、1980年の独立以来、37年も政権の座に居座っていたのだから。37歳以下のジンバブエ人はムガベ以外の国家元首を知らない。
ロバート・ムガベ(Robert Mugabe)は1924年2月21日、英植民地・南ローデシア(現ジンバブエ)の貧しい家庭に生まれた。6人兄弟の3番目。父親は大工。敬虔なカトリック教徒だった母親は、村の子供たちにキリスト教の教義を教えていた。
ムガベ一家が住んでいたクタマ(Kutama)村は、イエスズ会が設立した布教村。イエスズ会の教えに従い、ムガベは子供のときから厳しい自己鍛錬を積み、自制心が強い人間に育った。
田舎の子供なら誰もがそうしたように、牛追いが日課だった。牛追いをしながら本を読む、勉強好きの子供だった。
(因みに、南アフリカのジェイコブ・ズマ大統領も子供時代、牛追いをしたが、そのまま学校教育をまったく受けずに成人し、読み書きを習ったのはロベン島で服役中のことだった。今でも原稿を読むのがたどたどしい。自力で演説原稿が書けるとはとても思えない。)
勉強はよくできたものの、スポーツをしたり、他の子供と遊んだりするより、ひとりで本を読むことを好んだ。同級生たちからは「お母さんっ子」「腰抜け」とからかわれた。
1934年、長兄が下痢で亡くなり、次兄も毒入りトウモロコシを食べて死亡。同じ年、父親が大きな町ブルワヨへ。仕事を探すためだったが、そこで別の女性と知り合い、クタマ村の家族は捨てられてしまう。ロバートは
若干10歳にして、ムガベ家の家長となった。