2012/10/28

レディー・ガガの前座を断った南アバンド、新作ビデオでガガをケチョンケチョン

あなたが今売出し中の新人歌手だったら、そしてもし、あの、「レディー・ガガ」(Lady Gaga)に前座を頼まれたら・・・? 大感激? 光栄? プロモーションの絶好のチャンス? いずれにせよ、「断る」という選択肢はありえないかもしれない。
 
ところが、南アフリカのバンド「ディー・アントヴアルト」(Die Antwoord)は、「南アツアーで前座を務めて欲しい」というレディー・ガガの依頼を鼻にもかけなかった。レディー・ガガは「クールさがイマイチ」というのがその理由。

リーダーのニンジャ(Ninja)曰く、「自分たちだけで、新鮮で未来的な音楽とビデオを作り出してきた。自分たちだけで、世界一のライブを行ってきた。自分たちだけで、頑張ってツアーしてきた」。レディー・ガガの前座を務めては、その「クールさ」が台無しになってしまう、というのだ。

それどころか最新ミュージックビデオ「ファティー・ブーム・ブーム」(Fatty Boom Boom)で、レディー・ガガを散々コケにしている。

ビデオの中で、レディー・ガガ(勿論、本人ではありません)がジョハネスバーグの観光ツアーに参加。といっても、「ビッグ・ファイブ・ツアーズ」(Big 5 Tours)のガイド兼運転手が案内するジョハネスバーグは、南アフリカを良く知らない一般外国人がイメージする街。「アフリカ=野生動物」「南アフリカ=犯罪」といった先入観・固定観念を思いっきり笑っている。

なにしろ、薄汚いコンクリートジャングルの中をハイエナ、黒ヒョウ、ライオンが我が物顔で闊歩しているのだから。

さて、乗っていたミニバスが自動小銃を振りかざす一団にハイジャックされ、命からがら逃げ出したレディー・ガガ。股間に何か挟まっている、と産婦人科(兼歯科)へ。取り出されたのは・・・地元で「パークタウンプローン」(Parktown Prawn:「パークタウン地区のエビ」の意)と呼ばれるキング・クリケット(king cricket)。学名「libanasidus vittatus」。

(グロテスクな外観のため、忌み嫌われているが、大きなアゴが実は全然役立たずとか、浮気性な妻を夫が監視するとか、結構可愛いところもあるのだが。。。)



挙句の果ては、ライオンに食べられてしまうレディー・ガガ・・・。

このビデオ、ユーチューブ(YouTube)にアップロード後、2日で200万近くのヒット。(今現在で、約350万ヒット。)

そして、レディー・ガガ(本人)とディー・アントヴアルトの間で、ツイッターの応酬が始まった。

まず、レディー・ガガ。ディー・アントヴアルトのヒット曲の題名「アイ・フィンク・ユー・フリーキー」(I fink u freeky)を引用した後、「でも、あんたたちにはこれといったヒット曲がないじゃない。(私のコンサートの)チケットは、南アで10万枚も売れてるのよ」。

それに対し、ディー・アントヴアルトは「あんたの方が大物かもしれないが、俺たちの方がクールだぜ。それに、俺たちの局部には、エビなんか入ってない。はは」と訳のわからない反論。

もっとも、どこまで本気で、どこまでが冗談で、どこまでが双方の合意の上でのプロモーション手段なのかわからない。

というのも、ディー・アントヴアルトは、ミュージックビデオの内容やライブのやり方のみならず、メンバーのパーソナリティーまで、計算し尽し、緻密に練り上げているからだ。

例えば、ニンジャのキャラクター。英語の発音や、使用するアフリカーンス語の語彙や、体中を覆うイレズミのデザインが示唆するのは「教育程度が低く、アフリカーンス語を第一言語とし、ケープカラードのギャング文化に染まっている、労働者階級の白人」。

しかし、ニンジャの本名はワトキン・チューダー・ジョーンズ(Watkin Tudor Jones)。愛称ワディー(Waddy)。1974年9月26日生まれ。ジョハネスバーグ出身。英系の裕福な家庭に育ったお坊ちゃんらしい。ジョハネスバーグの程度の高い公立高校を卒業後ミュージシャンになり、「ニンジャ」の前にも、いくつかのバンドで異なる「パーソナリティー」を演じてきた。

レディー・ガガは11月30日ジョハネスバーグで、また12月3日、ケープタウンでコンサートを行うことになっているし、今回のミュージックビデオとツイッターの応酬は、宣伝効果を狙った「お遊び」? そこまで行かなくても、真面目に怒るのは「クール」じゃないと、レディー・ガガは判断したのかもしれない。

ところで、レディー・ガガの前座を断ったディー・アントヴアルトだが、来年2月に予定されている、レッドホットチリペッパーズ(Red Hot Chilli Peppers)の南ア公演では前座を務めるという。ディー・アントヴアルトにとって、レッチリは前座に甘んじても構わない「クール」なミュージシャンということなのだろう。

「ファティー・ブーム・ブーム」のオフィシャルビデオはこちら。


(参考資料:2012年10月5日付『Mail & Guardian』、10月20日付『Saturday Star』など)

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