クアハ。体の前半分がシマウマ、後ろ半分と足がロバのような動物だ。
在りし日のクアハ(Cool Green Science) |
世界中に残っているクアハの皮は23体だけ。しかも、結構個体差がある。野生で生きるクアハを研究した者はいない。
動物園・博物館に資料が残っているクアハ(sepe) |
何故クアハは絶滅してしまったのだろう。
人間のせいである。(やっぱり・・・。)
17世紀、クアハの生息地である南アフリカのカルー地方にヨーロッパ人が入植した。クアハが食べるのは地面に生えている草。入植者が飼っていた羊などの家畜と餌が競合するという理由で、殺しつくされてしまったのだ。殺されたクワハの肉は農場労働者の食料となり、皮は穀物袋や革製品などに利用された。
1970年代初頭、ヨーロッパでクアハの標本作りに関わったドイツ人自然史研究家ラインホルト・ラウ(Reinhold Rau:1932年2月7日‐2006年2月11日)は、「後ろ半身のシマが薄いシマウマを掛け合わせて、クアハを作り出すことができないか」と考えた。それに対して、懐疑的な声が高かった。当時、シマウマとクワハは別種と考えられていたからだ。
ところが、1984年、現存している皮のDNA分析により、クアハはサバンナシマウマ(plains zebra)の亜種であることがわかる。洪積世に他のシマウマから地理的に隔離され、独自の亜種として発展したらしい。また、サバンナシマウマの中でも、バーチェルシマウマ(Burchell's zebra)に一番近いという。
バーチェルシマウマも、一時は絶滅したと考えられていた。ケープ地方から現在のジンバブエにまで広がった白人入植者が、肉や皮を目的にして乱獲し、野生から姿を消した。飼育されていた最後の個体も1918年、ベルリン動物園で死亡。しかし、2004年になって、ナミビア北部のエトーシャ塩湖周辺で再発見された。現在、ナミビア北部やボツワナ北部に生息している。
1987年、南アフリカで「クアハ・プロジェクト」(Quagga Projects)が発足。翌年、第2世代第1号が生まれる。
これが第2世代。
現在は5世代目。
過去30年間に生まれた1300頭のうち、クアハっぽいシマウマは143頭。中でも、プロジェクト生みの親の名を取って「ラウ・クアハ」と呼ばれる、外見がクアハに酷似している個体は6頭。
ラウ・クアハ(The Times) |
クアハ・プロジェクトには批判もある。
クアハは、他のサバンナシマウマとは違う環境で生まれた亜種だ。現存するサバンナシマウマを交配して作られたラウ・クアハは、いくら外見がクアハに似ていてもやっぱりサバンナシマウマである。クアハとは適応する環境や行動様式が違う可能性大だが、誰も本当のクアハがどのように行動するのか知らないから比べようがない。
ケープタウン大学の遺伝学者エリック・ハーレー(Eric Harley)教授は、プロジェクトを支持しつつも、「外見だけに注目して作り上げられた個体は、クアハ独自の、他の遺伝子を持っていないかもしれない」と語る。
「絶滅種に外見が似ている動物を人工的に作り出すより、現在絶滅の危機に瀕している動物たちを救うことに資金を使うべきではないか」という批判もある。もっともな意見だろう。
最近3頭のラウ・クアハが競売にかけられ、1頭当たり58万ランドで落札された。現在の為替レートで460万円以上だ。因みに、バーチェルシマウマの競売価格は1万ランド以下。「幻のクアハ」「蘇った絶滅種」として観光の目玉商品となるのだろうか。。。
【参考資料】
"Quaggas come back to life", The Times (2017年5月15日)
"Bringing the quagga back from the dead: Experts reintroduce the zebra-like animal to South Africa 100 years after it went extinct", MailOnline (2016年2月1日)
"Quagga: Can an Extinct Animal be Bred Back into Existence?", Cool Green Science (2014年10月13日)
The Quagga Projects: selective breeding
【関連ウェブサイト】
The Quagga Projects
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