「子供を産むなら今のうち。5年後には婦人科医がいなくなる。」
こんな警告を発するのは、「南ア開業医フォーラム」(SA Private Practitioners' Forum)のCEO、クリス・アーチャー(Chris Archer)医師。10月29日ケープタウンで開催された、「南ア病院協会」(Hospital Association of SA)の年次総会での発言だ。他にも参加者から、専門医不足を懸念する声が相次いだ。
不足が特に懸念されているのは、婦人科医、麻酔医、外科医、泌尿器科医、神経外科医、心臓専門医、腫瘍専門医、放射線医、集中治療専門家など。
医者には一般開業医と専門医がある。南アフリカの専門医の数は、人口1000人当たり0.18人。先進国では1000人当たり2人以上が普通らしい。
南ア保健省によると、公立病院は全国併せて3000人の専門医を雇っているが、815ものポストが空きになっている。また、医師国家試験に合格した後、専門医になりたい人はそのための研修を受けなければならないが、大学病院の研修医のポストの30%が「空き」または「予算なし」(2009年調査)。
更に、専門医になりたがる若者がとみに減ってきているという。専門医の数が少ないから、長時間の労働になる。週末もないことが多い。労働条件が悪いので、ますます専門医になりたがらない。
特に人気がないのが、婦人科医、外科医、眼科医。「患者から訴えられ、経済破綻することを恐れているのがその理由」と言われる。
専門医が不足していることから、「今、一般開業医が専門医に患者を送っても、見てもらえるのは来年の4月」というのは、内科コンサルタント団体(Faculty of Consultiong Physicians of SA)の代表、アドリ・コック(Adri Kok)医師。
特に、公立病院で問題が深刻。「公立病院ではちゃんとした治療を施すことができない」「私立病院の状況はまだましだが、それでも専門家不足に苦労している」(私立病院「メディクリニック」(Mediclinic)の重役、ンカキ・マトララ(Nkaki Matlala)氏)。
また、ケープタウン大学医学部長のボンガニ・マヨシ(Bongani Mayosi)教授は、「必要機器が揃っていないことから、専門医になるための研修を隈なく行なうことが困難」という。
2002年から2010年の間、南アフリカで新しく専門医になったのは僅か3500名。そのうち、2000名が私立病院に勤務するか、国外に出てしまった。つまり、公立病院に勤務することにしたのは3500人中1500名。公立病院は「給料が安い上、労働条件が劣悪」のが原因だろう。
ところが、専門医が不足しているはずなのに、マヨシ教授によると、「専門医が南アフリカで良い職を見つけることは難しい」。ケープタウン大学では毎年600名の専門医を生み出しているが、海外に職を求める新卒医師が多いという。
因みに、南アフリカはイギリスへの専門医「輸出国」の第4位となっている。(第1位はインド、第2位パキスタン、第3位アイルランド。)
「最大の問題は計画性のなさ」というのは、保健省副部長のテレンス・カーター(Terence Carter)医師。「研修を受ける人数が、需要や合理的な計画に基づいて決められていない。」
保健省のお偉方にそうきっぱり言われても。。。
早急に問題解決に取り組み、専門医という職を魅力的なものに変えて、専門医の数をなんとか増やさない限り、近い将来、国民にとって大変困った事態となる。
(参考資料:2013年10月30日付「The Times」など)
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