2017/08/31

復活! ジョハネバーグ交響楽団

2012年に解散の危機を迎えたジョハネスバーグ交響楽団(JPO: Johannesburg Philharmonic Orchestra)。(存続の危機 ジョハネバーグ交響楽団

解散はなんとか免れたものの、2013年はわずか2シーズン(前年までは4シーズン)。そして、とうとう、「ビジネス・レスキュー」(business rescue)、即ち、日本の会社更生法・民事再建法のようなもののお世話になることになった。

シーズンは取りやめ、1年に片手で数えられるほどの単発公演のみ。フルタイムの音楽家たちは意気の上でも、財布の上でも、さぞかし辛かっただろう。

その後、2015年CEOに就任したボンガニ・テンベ(Bongani Tembe)の元で改革に取り組み、苦節の甲斐あって借金をすべて返済。2017年8月に新しい理事会、新しいロゴ、新しいドナーの元で活動を再開した。


ボンガニ・テンベ

キマジメでお堅い頭文字だけのロゴから、


ネルソン・マンデラ・ブリッジをイメージした、流動性とエネルギーのあるロゴに変わった。



新しい理事会は黒人が大部分を占める。


中でも注目したいのは、ジョハネスバーグ証券取引所(JSE)のノンクルレコ・ニェンべジ(Nonkululeko Nyembezi)会頭を理事に加えたこと。大企業が集まるJSEからお墨付きを得たことで、企業ドナーが一挙に増えた。

ノンクルレコ・ニェンベジ

更に、JPOの復興に大きな力となったのはジョハネスバーグ市だ。

1994年の第1回民主総選挙以来、ネルソン・マンデラを生んだ元解放運動組織「アフリカ民族会議」(ANC)が南アフリカの国政を担当してきた。ズマ大統領は「キリストの再来までANCが南アを支配する」と豪語。州レベルでも、野党「民主連合」(DA)が強い西ケープ州以外はすべてANCが選挙で勝利を重ねてきた。

しかし、黒人政権になって20年たっても一般国民の生活が向上しないどころか、公共サービスの質は低下する一方。政府は汚職と縁故主義に溢れ、一部のエリートだけが甘い汁を吸う。

そんなANCに、2016年の地方選挙で、都市住民の不満が爆発。ANCはジョハネスバーグで過半数の得票を確保できず、DAのハーマン・マシャバ(Herman Mashaba)が市長に就任。市政の刷新に乗り出した。

ハーマン・マシャバ
 JPOもDA市政の恩恵を受けることになる。なにしろANCの政治家たちは、ヨーロッパの高級ブランドは大好きなくせに、ヨーロッパに起源を持つ芸術の振興に関心がない。JPOにも政府からの援助はなかった。ところが、DA市長の旗振りで、ジョハネスバーグ市はJPOに対し、3年間で1000万ランド(約8500万円)の援助を約束したのだ。

そしていよいよ、復活記念コンサートが8月23日と24日に開催された。いずれもソールドアウト!

プログラムは

  • ヴェルディのオペラ『アイーダ』から『凱旋行進曲』
  • チャイコフスキー『ピアノ協奏曲1番』
  • チャイコフスキー『交響曲4番』

なんと奏者75名の大オーケストラ。



指揮者はアメリカ人のロデリック・コックス(Roderick Cox)。ミネソタオーケストラの副指揮者だ。

ロデリック・コックス

ソリストはアメリカ在住のロシア人ピアニスト、オルガ・ケルン(Olga Kern)。

オルガ・ケルン

財政再建に成功し、今後の財源も確保したことで、シーズンが復活することになった。10月末に4週間のスプリングシーズンが始まる。

JPO結成以来シーズンチケットを購入しているファンとしては、胸を撫で下したところ。多くの企業からの援助とDA市政がいつまでも続いて欲しい。


【参考資料】
"Fresh Look And World-Class Line Up Ushers In New Era For Jo'burg Philharmonic Orchestra" Huffpost(2017年8月16日)など

【関連ウェブサイト】
JPO
Friends of JPO フェイスブックページ
Olga Kern オフィシャルウェブサイト

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