2017/09/21

これは役立つ! 間違いやすい英語の言い回し

20年以上昔の話だが、ニューヨークの某語学学校で日本語と英語を教えていたことがあった。英語を日本人に、日本語をアメリカ人その他に教えていたのだ。

学校の事務員のキムさんは、日本語が流暢な韓国人。とてもいい人なのに、時々、心がグサッとくるような発言をする。「そんなこと、言う人じゃないのに・・・」と注意してみると、原因はちょっとした日本語の言い回しにあった。ほんの小さな言い回しのせいで、とても非人情に聞こえるのだ。勿論、本人は気がついていない。ネイティブ並みの流暢さのために、聞いている日本人も、まさか言い回しを間違っているとは気がつかない。知らないうちに、すごい損をしている。

アメリカの大学の英語教授法修士課程で、第2外国語習得のセオリーと、教え方のテクニックや実技を随分勉強したが、その時、外国語を話す上で、「正確さ」(accuracy)、「流暢さ」(fluency)、「適切さ」(appropriacy)の3つが大切であることを教わった。

実習で中級のクラスを教えた時、出身国の文化や伝統が会話能力に大きく影響していることに気がついた。日本人やタイ人の学生は、元々、授業で積極的に話すことに慣れていない。その上、文法的に正確な英語を話そうとするあまり、恐れて口を開かず、口を開いても小さい声でボソボソ。一方、コミュニケーションに長ける中南米の学生は、手振り身振り入りで、立て板に水のように流暢に話しまくるが、文法はめちゃめちゃ。うまくコントロールしないと、授業はラテンアメリカンに乗っ取られてしまう。

時間をかけて勉強すれば「正確さ」は身に付く。間違いを恐れずに場をこなせば、「流暢さ」は身に付く。体で覚えるしかないのが、「適切さ」である。状況に合った表現を使い、「文法的には正しいけど、普通、そうは言わない」という事態やとんでもない誤解を避けるためには、英語を沢山聞いて、沢山読んで、フィーリングを掴むしかないのである。

それでも、日本にいながら英語を体で覚えるのは至難の業。なにか良い教材はないかなと思っていたら、「Business Insider」に素晴らしい記事があった。日本人が間違って使いやすい、文法的には正しいが言いたいこととはかけ離れた英語表現を分析し、それではどう言うば良いのかが説明してある。

たとえば、

「What is your job?」(あなたの仕事は何ですか?)は文法的には正しいものの、えらくブッキラボウに聞こえ、日本語の「どんなお仕事をしているんですか?」のニュアンスは出ない。


「政府のために働いている」というのは、「スパイ」の婉曲表現なのだ。


「都合がよい」を辞書で引いたら「convenient」と出ていたから、だろうが・・・。


「the」があるかないかで、こんなに意味が違う。

冠詞は難しい。英語教授法修士課程の授業で、ある日、教授が英語の小説を1ページコピーしてきた。名詞の前がすべて空欄になっている。そこに、「a/an」か「the」か、冠詞が必要ないと思えば「X」を入れろという。生徒の大部分が英語のネイティブスピーカーである。それでも、結果はバラバラだった。人によって、意味やニュアンスの解釈が違ったからだ。


「idea」に「s」をつけるかつけないかで、全然違う。これも日本人には難しい。


妊娠系の間違いは、第1言語が英語のスペイン語学習者にもよくある。英語で「embarrassed」は「照れくさい、恥ずかしい」の意。 ところがスペイン語の「embarasada」は「妊娠している」。「恥ずかしいわ」と言ったつもりで、「おめでとう!」と祝福されたら、きっと間違って使っている。


これは言い方次第。


「親友」とは「特別な友達」のことだから、と思って、胸を張って「specia friends」と言ったら、とんだ誤解を招く。


この場合、「that」はつけない方がいい。つけないでいいことをわざわざ言うと、それを強調していると思われる。


「be going to」は「これからxxする」という事実・予定を述べているだけで、「失礼します」という時の申し訳なさが表現できない。
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一体、「Business Insider」はどこでこんな掘り出し物を見つけたのだろう? 実は、日本をはじめとするアジアのニュースを紹介する「Rocket News 24」の記事の転載だった。そして、「Rocket News 24」の元ネタは、ヤフージャパンが運営する「X Brand」。「人気雑誌の最新記事が読める」とある。では、どの人気雑誌?

答えは「COURRiE JAPON クーリエ・ジャポン」。「9月号p106~」とあるけど、いつの年なんだろう。

記事を書いたのは、デイビッド・セイン(David Thayne)さん。

1959年米国生まれ。証券会社勤務を経て来日し、翻訳、英語教育、英会話学校経営などで活躍。現在、エートゥーゼット英語学校校長。『その英語、ネイティブはカチンときます』など著書多数。

な~んだ、有名な方だったんですね。とすると、このブログを読んでいらっしゃる皆さんは、ここに紹介した「よくある間違い」例などとっくにご存知かも。。。

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✤この投稿は2014年6月7日付「ペンと絵筆のなせばなる日記」掲載記事を転載したものです。


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