2014/03/28

南アビジネスマン3人がドバイの刑務所に 南ア政府のお墨付き投資話に騙される

フリーステート州のビジネスマン、アリ・モコエナ(Ali Mokoena)さんは「オラ・フロリカルチャー」(Ora Floriculture)という共同組合の代表者。生花輸出ビジネスに海外から投資家を募ろうと、2012年2月、南ア貿易産業省(Department of Trade and Industry)に依頼して、同省の海外事務所で情報を配布してもらった。3か月後、アミット・ランバ(Amit Lamba)というインド人から電話があった。「ドバイの南ア領事館で、投資家募集の案内を見た」「1億8000万ランド(約18億円)投資したい」という。

貿易産業省から、同省ドバイ事務所が調査を行うまで、ランバ氏とビジネス交渉を開始しないようアドバイスがあったので待ったところ、一週間後、同省から「ランバ氏は信用できる。交渉を開始しても良い」とEメールで通知。フリーステート州経済担当部長のオフィスが、州都ブルームフォンテインのホテルで、契約調印式をオーガナイズしてくれた。

モコエナさんによると、ランバ氏はブルームフォンテインやジョハネスバーグで他のビジネスマンにも会ったらしい。リンポポ州の投資貿易部とは、「了解覚書」(memoranda of understanding)に調印したという。この覚書があったことで、ランバ氏を信用したビジネスマンも数多くいた。

リンポポ州との覚書調印
ランバ氏は2012年10月、モコエナさんたちをドバイに招待した。交通費、経費はランバ氏持ちだ。

ところが、 ドバイに着いたら、様々な支払いを求められる。共同出資会社設立の費用、銀行口座開設費用、その銀行口座への入金・・・。そして、アラビア語で書かれた「出資合意書」にサインすることを求められ、サインしたら・・・。

ドバイ当局に逮捕されてしまった!


サインしたのは「出資合意書」ではなく、ランバ氏に大きな借金があることを認める文書だったのだ。

現在、「出資合意書」にサインしたばかりに刑務所に入っているのは、ヤニー・ファンデルヴァルト(Jannie van der Walt)さん、トジョコ・カンブレ(Tjoko Kambule)さん、セロ・ツォロ(Sello Tsolo)さんの3人。

ツォロさんの家族はランバ氏に既に45万ランド(450万円)以上払った。酪農関係のプロジェクトマネージャーをしていたツォロさんは、2012年9月に6億7500万ランド(67億5000万円)の投資を約束した「了解覚書」を交わした後、ドバイに渡りそのままだという。

ツォロさんを戻して欲しいという家族の哀願に対し、ランバ氏からスマホ経由で届いたメッセージは・・・。

3人が組織に支払いをしないで逃げようとした。ヴァルト氏は2013年1月3日に逮捕された。死ぬか支払いをするまで刑務所に入ったままだ。カンブレ氏は2013年9月1日以来、既に4か月収監されており、支払いが済むまでそこに留まる。セロ氏も支払いまで刑務所に留まることになるだろう。私は彼らを逮捕させるために努力し、時間と金を使った。それというのも、神は自らを助けるものを助けることを学んだからだ。」

まるで悪いのは、金を支払わない3人という言い方。

アミット・ランバ(「Mail & Guardian」より)

しかし、どうみても、南アフリカとアラブ首長国連邦という国家をうまく利用した「身代金目当ての誘拐」ではないか。

国民3人が詐欺にかかって異国の刑務所に入っているのに、南ア政府はつれない。

日本の外務省にあたる「国際関係協力省」(Department of International Relations and Cooperation)のスポークスマン、クレイソン・モニエラ(Clayson Monyela)曰く、「我が省には他国の法的な問題を調査する権限はない」「アラブ首長国連邦の法的な問題に介入する立場にはない」。モットモだが・・・。

リンポポ州投資貿易部はランバ氏と関わったことは認めるものの、「投資者候補として推薦はしていない」。

ドバイ当局にしても、この3人はランバ氏に借金があることを認めた書類に自らサインしているのである。内容を知らないままサインしたと主張しても、サインしたことにはかわりない。やはりドバイまで行き、1万2000ドルを失ったというトマス・スミス(Thomas Smith)さんは「英語の書類しかサインしない」ことを主張して、無事帰国している。冒頭のモコエナさんも、サインせず逃れた。

「リンポポ州との覚書を餌として使った」「天国と地上の楽園を約束してアラブ首長国連邦へ連れて行き、一旦到着したら地獄を体験させる」というモコエナさん。

国際的な詐欺というとナイジェリアの「419詐欺」が有名。これは「誰も知らない大金を国外に持ち出す手助けをしてくれたら、分け前を与える」などという如何にも怪しい文書が見ず知らずの人からいきなりメール(昔は封書やファックスだった)で送りつけられるもので、話に乗ってしまう側にも落ち度がないとはいえない(というか、おおあり)。だが、今回の被害者は南アの中央政府や州政府の「お墨付き」を信じたのだ。アラビア語の書類に言われるままにサインしてしまったのは軽率だったとはいえ、一方的に責めるのは酷である。

なんとかドバイ政府が詐欺であることを認めてくれるしかないだろうが、南ア政府はあてにならない。家族が自力で証拠を集め、世論を巻き込み、ドバイ政府を動かすしかないのだろうか。

この3人の運命やいかに。

(参考資料:2014年3月28日付「Mail & Guardian」など)

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