2014/03/20

劇場公開前の南ア映画をハリウッドがリメーク 『イナンバー・ナンバー』(iNumber Number)

他の国で作られたヒット映画をハリウッドがリメークするのはよくあること。

Mr.レディMr.マダム』(1978年)がロビン・ウィリアムズとジーン・ハックマン主演の『バードケージ』(1996年)、ジャン=ポール・ベルモンド主演の『勝手にしやがれ』(1960年)がリチャード・ギア主演の『ブレスレス』(1983年)、『赤ちゃんに乾杯!』(1985年)がトム・セレック主演の『スリーメン&ベビー』(1987年)、『マーサの幸せレシピ』(2001年)がキャサリン・ゼタ=ジョーンズ主演『幸せのレシピ』(2007年)・・・。数えると切りがない。

日本映画も結構リメークされている。『七人の侍』(1954年)が『荒野の七人』(1960年)、『Shall we ダンス?』(1996年)が『シャルウィダンス』(2004年)、『リング』(1998年)が『ザ・リング』(2002年)・・・。

リメーク映画の多くが、本国でヒットを作り出した「レシピ」(筋など)をそのまま用い、英語版を作るという安易な手法を用いている。

ところが、今回、本国で「ヒット」どころか、まだ劇場公開もされていない南アフリカ映画を米大手「ユニバーサル」がリメークすることになった。

2013年「トロント国際映画祭」(Toronto International Film Festival)に出品された『イナンバー・ナンバー』(iNumber Number)。ドノヴァン・マーシュ(Donovan Marsh)監督によるズールー語の作品だ。南アフリカでは、「ジョージー映画祭」(Jozi Film Festival)で今年2月21日に一回上映されただけ(多分)。

内容は、真面目な警察官が腐敗した上司に嫌気がさし、パートナーを説得して、ふたりで現金輸送車強盗グループに加わるが・・・というアクション・スリラー。アカデミー賞外国語映画賞に輝いた『ツォツィ』(Tsotsi)のプレスリー・チュエニヤハエ(Presley Chweneyagae)が主役のひとりを務める。


リメークの話が持ち上がったのは、なんと「トロント国際映画祭」で上映される前のこと。大手映画製作会社3社がリメーク権を争い、ユニバーサルが「2年以内にリメークする権利」を競り落とした。

『イナンバー・ナンバー』は「100万ランドを大きく下回る」(監督談)超低予算で制作された。因みに、アカデミー賞最優秀作品賞候補になった、ジョハネスバーグが舞台のSF大作『第9地区』(District 9)の予算は推定3000万ドル。やはりジョハネスバーグが舞台のドラマ『ツォツィ』の製作費は約300万ドル。製作費が史上最高なのは『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』(Pirates of the Caribbean: At World's End)。3億ドルもかかっている。

『イナンバー・ナンバー』の場合、お金がないので、アクションシーン以外の予算は徹底的に抑えた。特撮は殆どない。車の衝突シーンはすべて本物。

持っているものを賢く使うことで、大金を費やすことなく、派手な映画を作った」とマーシュ監督。

リメーク権の金額は明らかにされていないが、複数のハリウッド大手制作会社が争ったところからすると、かなり高い金額だったのではないか。監督はホクホク顔。

でも、主演がアフリカの俳優じゃあ、やっぱりアメリカでは上映されないのか、と残念がっていたら、なんと、南アバージョンが全米10都市で公開されることになったという。配給してくれるのは、ロサンジェルスの配給会社「ウレキン・ヒル・エンターテインメント」(Wrekin Hill Entertainment)。

南アフリカの外で配給する野心は全く持っていなかったから、すごく興奮している」とマーシュ監督。

さて、南ア俳優によるズールー語映画がアメリカでヒットするだろうか。楽しみだ。

南アフリカでの劇場公開は4月25日。日本で公開されるかな~。

予告編はこちら。



(参考資料:2014年3月19日付「The Times」など)

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