2013/01/08

南アフリカの英語 「交通信号」は「ロボット」!?!

「3つ目のロボットを左に曲がって・・・。」

南アフリカで道を聞くと、こんな返答が戻って来る。

といっても、道路の各所にロボットがつっ立っているわけではない。交通信号機のことだ。

交通信号機が一体またどうして「ロボット」? 南ア人に聞いても、明確な回答が得られない。せいぜい、

「う~ん。信号が南アに初めて設置された時、あまりのテクノロジーのスゴサに皆驚いて、ロボットみたいだ、と思ったのかな~」程度。

「ロボット」=「人の代わりになんらかの作業を行う装置」という定義に基づけば、交差点に立って交通を誘導するお巡りさんの代わりということで、「交通信号機」=「ロボット」でもいいのかな~???

フェイスブックで最近、こんな一覧表を目にした。題して、「Howzit my bru? - Talk like a South African」(やあ、兄弟-南ア人のように話そう)
「Howzit」(ハウズィット)は「How is it?」の短縮形。「どうだい?」といった意味だが、「元気だ」とか「具合が悪い」とかいう返事を期待しているわけではない。正しい返答は、「Howzit」。ばったり出会った友だちに「Howzit」と声を掛けられたら、「Howzit」と答える。「Hello」と同じ使い方をするわけですね。

「Izzit?」(イズィット)も良く使われる。「Is it?」の短縮形。英文法の授業で習う「付加疑問文」だ。文法的には元の文に呼応して「Do you?」「Did he?」「Are you?」など使い分けるのが正しいが、南ア人は全てを「Izzit?」で済ませてしまう。「へ~」「ほんと~?」「そうなの~」って感じ。

「Serious?」(シリアス)は「ウッソー!」「ホントー?」。

イギリス人やアメリカ人が混乱するのが、「Just now」(ジャスト・ナウ)。英米では「すぐ」という意味。そのつもりで、「いつやってくれる?」「ジャスト・ナウ」というやりとりの後、「すぐやるんだろう」と思って待っていると、全然やってくれない。だが、「いい加減なヤツ!」と怒ってはいけない。南アフリカでは「今やっていることを終えて、手が空いたら」みたいなニュアンスだから、5分後かもしれないし、5時間後かもしれない。「そのうち」程度に受け取る必要がある。

本当に「すぐ」の場合は、「Now now」(ナウナウ)という。

「How are you?」(ハウ・アー・ユー)には隠れた意味がない。しかし、南ア人は人種を問わず、本当に良く使う。その返答(「Fine, thank you.」「Fine.」「Good.」など)と「And you?」が一体化して決まり文句になっているから、こんな会話もママある。

同僚「Hi, morning! How are you?」(お早う! 元気?)
私 「Fine, thank you. And you?」(元気だよ。ありがとう。元気?)
同僚「Fine, thank you. And you?」(元気よ。ありがとう。あなたは?)
私 「・・・」(・・・沈黙・・・)

黒人の中には、電話の会話ですら、「How are you?」で始める人が多い。電話が鳴って受話器を取ると、いきなり「How are you?」(お元気ですか)。「誰やねん?」と思いながらも、

私 「Fine, thank you. And you?」(ええ、お蔭様で。お元気ですか?)
相手「Fine, thank you. This is Precious.」(ええ、お蔭様で。プレシャスですが。)
私 「Oh, Precious! How are you?」(ああ、プレシャス! 元気?)
相手「Fine, thank you. And you?」(元気よ。元気?)
私 「Fine, thank you.」(元気よ。)

・・・まどろっこしいこと、この上ない。

駐車場が見つからず、ミーティングに遅れそうになって、警備員に「済みません。駐車場はどこですか?」と聞いたら、「あなたは挨拶もしないのか!」と怒られ、仕方がないので取りあえず謝り、内心ヤキモキしながら、「How are you?」「Fine, thank you.」・・・を繰り返したこともあった。

アフリカーンス語やズールー語などから派生した言葉など、英語の文章で使われるものの、英米では通じない表現もある。

例えば、「doff」(ドフ)。「stupid」の意。「He is a bit doff」(彼はちょっとトロい)のように使う。 「lekker」(ラッカー)は「cool」、つまり「カッコいい」とか「すごくイイ」。「fundi」(フンディ)は「専門家;物知り」、「muti」(ムーティ)は「薬」、「takkies」(タッキーズ)は「スニーカー」。

「軽トラック」は「bakkie」(バッキー)だが、オランダの友人が「オランダ語でもそういうよ」と言っていた。

「Ag, shame!」(アッハ、シェイム)、または「Shame!」(シェイム)も日常的に耳にする表現。「Ag!」は間投詞。「shame」はこのように単独で使われる場合、「可哀想に」「気の毒に」といった、同情や憐憫の情を表す。「慈しむ」気持ちが含まれることからか、親愛やいとおしみを表現したい時にも使われる。赤ちゃんの可愛い仕草に対する「アッハ、シェイム」は、「まあ、なんて可愛い!」。「恥を知りなさい」とか「残念だ」とかいっている訳ではないので、ご注意を。

言葉は生き物のように、変わっていくものだ。毎日のように新しい言葉が生まれ、既にある言葉に新しい意味が加わったりする。先日、「ロボット」のことを考えながらジョハネスバーグからプレトリアに向かって高速道路を運転していたところ、「空飛ぶ円盤」(Flying Saucer)という標識が目に飛び込んだ。絵表示からすると、大きな立体交差道路のことのようだ。これも南ア英語なんだろうか?

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